作:リンダ・スキアース 絵:マルタ・アルバレス・ミゲンス 訳:まえざわあきえ
出版:出版ワークス
最初の女性古生物学者メアリー・アニング。
まだ、女性の地位が低かった時代。
化石への情熱でその力を世に認めさせた人物です。
そんなメアリーの姿をわかりやすく描いた絵本です。
あらすじ
イギリスの田舎、ライムリージスの海岸で、メアリー・アニングは化石や貝殻を拾っていました。
しかし、海岸沿いの崖は脆く、命がけでした。
メアリーの家は貧しく学校に行けませんでした。
でも、化石のことをもっともっと知りたいメアリーは自分で勉強し、見つけた化石は絵に描いて記録していきました。
そんなある日、メアリーのお兄さんが埋まっている目の化石を見つけました。
メアリーとお兄さんは慎重に化石を掘り出していきます。
すると、巨大な頭の骨が姿を現しました。
その後、メアリーは近くに体の化石もあるはずだと考え、来る日も来る日も探しました。
ですが、中々見つかりません。
そうして1年が過ぎた頃、転機が訪れます。
大きな嵐によって、海岸の崖が削られたのです。
削られた崖からは体の化石が出てきました。
全体像が復元され、イクチオサウルスと名付けられました。
それは、誰も知らない動物の骨でした。
学者たちがこの動物について議論を続ける中、メアリーは黙々と発掘を続けていきます。
そして、腰の骨の近くで時々見つかる、黒い石のような塊に興味を持っていました。
その正体はうんちの化石でした。
これにより、どんなものを食べていたかがわかるようになりました。
さらにメアリーはたくさんの発見をしていきますが、ロンドン地質学会にはいれてもらえませんでした。
当時は男性しか入れなかったからです。
メアリーはどのようにして、世に認められていくのでしょうか。
『きょうりゅうレディ』の素敵なところ
- 驚くべき実話
- 当たり前が当たり前じゃなかったことに気付かせてくれる
- 太鼓の恐竜と現在が繋がる仕事のお話
この絵本の素敵なところは、なんといっても実話であるところでしょう。
とても強く、情熱的で、好奇心旺盛なメアリー。
まるで、アニメや物語のキャラクターのようです。
ですが、実在し、世界の常識まで変えてしまいました。
決して恵まれた環境ではない中、「知りたい」という気持ちに常に向き合っていく姿にはきっと勇気や夢をもらえることでしょう。
そんなメアリーの力強さと一緒に、現在の常識と昔の常識が全然違うものだったことに気づかされます。
「恐竜」という言葉が当たり前にあり、図鑑を開けばたくさんの恐竜が絵とともに載っている現在。
しかし、一昔前には「恐竜」という存在自体が知られていず、地球はわずか6千年前に出来たと思われていて、「絶滅」という概念すらなかったのです。
そして、これらはメアリーのような人たちの力によって発見されてきたのです。
また、女性が先生や学者をやることも当たり前ではなく、下に見られていた時代があったことも子どもたちにはびっくりです。
これら昔の常識が出てくるたび、
「え!?そうだったの!?」
と驚きの声があがります。
さて、恐竜の絵本や、化石の絵本は数あれど、発掘者のことを描いた絵本はあまりないと思います。
しかも、これだけわかりやすいものとなるととても珍しいでしょう。
図鑑は過去の地球を知ることが出来ます。
しかし、この絵本は発掘者を通して、過去の恐竜と、それを発掘し研究する現在とを結び付けてくれます。
恐竜が好きな子にとって、これはさらに世界を広げてくれることになるでしょう。
恐竜との新たな関わり方を伝えてくれているのですから。
発掘者、研究者という珍しい視点から恐竜を描いた。
アニメや物語のようなノンフィクション絵本です。
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