文:八百板洋子 絵:小沢さかえ 出版:福音館書店
体のどこかに星を持った姫がいた。
姫と結婚する条件は、どこに星があるかを言い当てること。
でも、失敗すれば羊にされてしまいます。
これに挑む、貧しい若者と姫の昔話です。
あらすじ
昔あるところに、お城がありました。
そこには年老いた王様と、カリーナ姫という美しい姫が住んでいました。
カリーナ姫が18歳を迎えた時、王様は国中にお触れを出しました。
それは「カリーナ姫の持っている星がどこにあるか言い当てたものに、姫と国の半分を譲る」
というものでした。
しかし、「言い当てられなかったら、羊にしてしまう」とも言いました。
お城には次々と挑戦者が現れましたが、誰一人言い当てることは出来ず、城の周りは羊で埋め尽くされていきました。
ある日、貧しい羊飼いの若者が城にやってきました。
カリーナ姫にあると若者は仕立て屋だと名乗りました。
若者はカリーナ姫に言いました。
「この世に一つしかない花嫁衣裳を作って差し上げたい」と。
それに興味を持ったカリーナ姫がどんな花嫁衣裳か聞いてみると、
空の星屑を織り込んだスカート
野原の草のしずくを織り込んだ上着
太陽と月の光で織ったヴェール
だと言うのです。
そこでカリーナ姫は、姫が一人になる日を若者に伝え、その時に衣装を持ってくるよう言いました。
その日から若者は山や野原を駆け回り、衣装を作っていきました。
そして、約束の日。
若者は一層たくましくなり、カリーナ姫の前に姿を現しました。
カリーナ姫はさっそくに衣装を見せてもらうと、約束した通りの衣装が出来上がっていました。
それを見て、早速着てみることに。
その花嫁衣裳を着たカリーナ姫はそれはそれは美しい姿でした。
若者はそんなカリーナ姫の右足のひざに、きらりと光る星があることを見逃しませんでした。
それからしばらく経ち、若者はまたお城にやってきました。
星の場所を言い当て、カリーナ姫と結婚するためです。
果たして、無事にカリーナ姫と結婚することは出来るのでしょうか。
『ほしをもったひめ』の素敵なところ
- 美しく躍動感のある絵で描かれる物語
- 姫と若者両方の心理描写が描かれている
- 若者らしい最後の選択
この絵本を一目見て思うのは、絵の美しさでしょう。
純粋に「きれい」と思うだけでなく、物語としての躍動感も物凄いのです。
失敗したものを羊に変える魔法使いの禍々しさ。
若者と姫の邂逅。
衣装を作るために奔走する若者の様子。
花嫁衣裳を着るカリーナ姫。
そして、若者と王様の対峙。
そのすべてが、美しく躍動的で物語に引き込まれていくのです。
子どもたちも「本当に光を集めてる!」
「どんな衣装になるんだろう!」
「スカートに本当に星と夜がくっついてるよ」
など、すっかり夢中になっていました。
また、平易な文章でわかりやすく書かれているので、とてもとっつきやすく読みやすい絵本でもありまます。
その中に自然に絶妙に姫と若者の心理描写を入れているのが、とても素敵なところです。
初めて若者と会った時、そのきれいな瞳にドキッとする姫。
でも、立場上すぐに気を取り直し、つんとした態度で接する姿。
最初は羊を元に戻すために星を探していた若者が、衣装を着たカリーナ姫の美しさに心奪われる様。
そんな所々に織り交ぜられる、お互いへの感情が、物語の帰結をとても自然なものにしてくれているのです。
だからこそ、若者と姫に深く感情移入するのだと思います。
そして最後の「めでたしめでたし」には若者らしい選択と、それによるエッセンスが付け加えられ、この物語を読んできた人であれば、心から「めでたしめでたし」と思える結末になっています。
絵、文章、描写、構成。
すべてが物凄く綺麗にまとまって、読み始めたら目が離せなくなる昔話です。
コメント