作:岡田よしたか 出版:佼成出版社
食具を見ているとたまに出会う「これ何に使うんだろう?」。
でも、この食具は自分でもその使い方を忘れてしまったみたいです。
そんな食具の自分探しの物語が始まります。
あらすじ
あるところに、フォークのようなナイフのような形をした一本の食具がいました。
この食具は、自分が誰なのかわからないようです。
見知らぬ場所で迷子になっていた食具が歩いていると、耳かきに出会いました。
耳かきは「きみは耳かきに決まってるがな」と言いますが、どうやら違います。
次に、くぎ抜きがやってきました。
くぎ抜きは「きみはくぎ抜きや」と言い、釘を抜かせようとしましたが、うまく抜けませんでした。
さらに行くと、編み棒に出会いました。
編み棒は「きみは編み棒や」と言って、編み物をさせてみましたが、うまく編めませんでした。
食具には「自分は食べるために使うものだ」という信念があったので、自分を知る旅に出ることにしました。
歩いていると、ラーメンがやってきました。
ラーメンをすくわせてもらいましたが、うまくいきません。
さらに行くと、お寿司、お餅、カレーライスと色々な食べ物と出会いましたが、どれもうまくすくったり、刺したり出来ませんでした。
一体、この食具は何なのでしょうか。
果たして、思い出すことは出来るのでしょうか。
『ぼくはいったいなんやねん』の素敵なところ
- 滅多に出番のない食具という目のつけどころ
- その形を色々なものに結び付ける発想力
- 子どもたちが体験する未知との遭遇
フォークやスプーン、ナイフなどの食具を扱った絵本は数あれど、この食具を扱った絵本は唯一無二なのではないでしょうか。
たった一つの食材に対してしか使わないという、物凄く用途の狭い食具。
おそらく一般家庭には基本的に置いていない食具。
そんな食具はそう多くはないでしょう。
その中で、この食具で絵本を描こうという目のつけどころが本当にすごいと思います。
ぼくも表紙を見て、「これはあの食具だよな・・・?」と目を疑いました。
この絵本の面白さは、その題材だけではなく、それを色々なものに見立てる発想力にもあります。
耳かき、くぎ抜き、編み棒から、果てはカブトムシやハサミムシまで。
言われてみると「たしかに!」と思う発想がてんこ盛りです。
子どもたちも「確かに似てるけど、違うんじゃない・・・?」と似ていることは認めます。
さてさて、最後にはもちろんその正体が明かされます。
その名前を聞いた時、子どもたちは唖然。
「そんなのあるの!?」と想像もしていなかった食具に驚きを隠せません。
中には「ほんとにあるの?」と創作だと疑い始める子もいるほどです。
その姿はまさに未知との遭遇。
たった一本の食具が、子どもたちの常識を揺れ動かす様は、新しい体験でした。
謎のマニアックな食具を通して、当たり前をぶち壊す。
この食具を見つけたら、その名前を得意げに叫ばずにはいられなくなる絵本です。
コメント