作:長新太 出版:亜紀書房
みなさんは山も歩くことを知っていますか?
では、山は歩いてどこに行き、何をするのでしょう?
そこには衝撃の山事情が待ち構えていたのです。
あらすじ
山で暮らしているタヌキのおじさんがいました。
その山の名前はぽんぽこ山。
タヌキのおじさんが、ある朝散歩をしていると、大きな足跡を見つけた。
怪物の足跡だと思い、家に帰ってぶるぶる震えていると、どこからともなく「ふっふっふ」という笑い声が聞こえてきた。
なんと、笑っていたのは山だった。
山に足跡のことを聞いてみると、山は「くすぐってみて」と言った。
タヌキのおじさんがくすぐってみると、なんと山は立ち上がったではないか。
山が歩き始めたので、おじさんはついていってみることにした。
山は険しい場所や、怖い所も平気で歩いていく。
タヌキのおじさんは大変な思いをしながらもついていった。
山は海の近くまで来ると「ちょっとお腹が空いた」と言った。
そして、にゅーと手を伸ばし、クジラを捕まえると食べてしまった。
お腹がいっぱいになると、山は眠ってしまった。
タヌキのおじさんも山に入って眠った。
翌朝、山は元気になって張り切っている。
そして、また歩き出した。
ずんずん歩いていくと、向こうからも山がやってきた。
向うの山はトンガリ山。
二つの山は出会うと、なんとプロレスを始めたのだった。
タヌキのおじさんはレフェリーをしている。
山同士の壮絶なプロレス。
勝つのは一体どちらなのか!?
『やまがあるいたよ』の素敵なところ
- 展開が読めなすぎる展開
- 急過ぎるお話の緩急
- 振り回させるのが楽しい
この絵本を初めて見て、話の展開が読める人はまずいないでしょう。
それぐらい予想外の展開が続きます。
くすぐったら立ち上がり、お腹が空いたらクジラを食べ、山とプロレスを始める。
もう意味がわかりません。
でも、だからこそ先の展開から目が離せないのです。
この目が離せなさを、さらに強力にしているのが、お話の緩急です。
時速100キロで進んでいると思ったら、急に徒歩になるくらいの緩急を所々に入れてきます。
山が歩き始めてどこに行くのかとドキドキしていたら、急にタヌキのおじさんが山にしがみつく大変さに注目したり、
クジラを食べ始めて、みんなが「えー!?」となって、興奮冷めやらない流れから、クジラを食べたら山のお腹がポッコリしてしまった話が始まったり、
山が張り切って歩き出し、どこにいくのか気になってるところから、タヌキのおじさんの食事シーンに移ったり・・・
と、緩急がすご過ぎて、一瞬話についていけない子が続出。
やっと状況を理解した頃にはまた、本編が始まりプロレスをしたりします。
この先が読めなすぎる展開と、物凄い緩急はまるでジェットコースターのよう。
息つく暇があるようで、息つく暇がありません。
それにより子どもたちに目を話す暇を与えないのです。
そして、この振り回され続け、驚かされ続ける感じが、とても楽しく気持ちよいのです。
「えー!?」という驚きと、「なんだこれ!」という笑いが絶えない。
文章量の少し多めな、読み応えのあるナンセンス絵本です。
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