文:岩崎京子 絵:田島征三 出版:教育画劇
夜になると化け物が出るという寺。
そんな寺に一人で泊まったらどんなことが起こるでしょう。
怖く、楽しく、ちょっぴり物悲しい・・・。
色々な気持ちを感じさせてくれる絵本です。
あらすじ
昔ある村に、荒れた古寺があった。
旅の坊様がやってきて、古寺に泊めてもらおうと声をかけたが、誰も出てこなかった。
通りがかった村人に古寺のことを聞くと、そこには化け物が出るという。
しかし坊様は「ばけもんに会ってみたかった」と古寺に上がり込むのだった。
坊様は古寺を一通り掃除すると寝てしまった。
真夜中、本当に化け物が現れた。
なんと、化け物たちは坊様の周りで踊り出したのだ。
さらに本堂の隅などからも、化け物がやってくる。
その騒がしさに目を覚ました坊様は、一緒に踊り出してしまった。
その踊りや歌を見て、化け物たちも大盛り上がり。
一晩中踊り明かしてしまった。
朝になり、化け物たちは一人一人消えていき、坊様一人になっていた。
さて、翌晩。
また、化け物たちが坊様の所にやってきた。
「坊様うたえや」「坊様おどろや」と言う化け物たち。
しかし、その正体に気付いていた坊様は・・・。
『ばけものでら』の素敵なところ
- 怖さと楽しさの緩急
- かわいく見えてくる化け物たち
- 坊様の本当の優しさ
この絵本はタイトルの通り、化け物の絵本です。
最初は不気味な雰囲気で始まります。
化け物が出る荒れ果てた古寺。
村人の怖がりよう。
そして、真夜中になり本当に出てくる化け物たち。
その不気味さに目を背ける子どもの姿も。
でも、なにやら悪さをするでもなく、踊って騒ぎ出す化け物たち。
子どもたちも「おや?」と思い始めます。
さらに踊り出す坊様の楽しそうな姿。
褒めてくれる化け物たち。
ここまで来ると、不気味さはどこかに行ってしまい、楽しい雰囲気一色に。
坊様に懐く化け物たちもかわいく見えてきます。
子どもたちも、
「ともだちになってよかったね」
「また出て来てくれるといいね」
と、すっかり化け物の味方になっていました。
しかし、一緒に騒いだり、楽しんだりするだけではその化け物たちは報われません。
坊様はそのことに気付きます。
そして、行動します。
一見厳しい坊様の姿。
その表情。
でも、それは本当の意味での優しさなのです。
そこには少しの物悲しさが漂います。
怖いだけじゃない。
楽しいだけじゃない。
怖くも楽しくも物悲しくもある。
そんな奥深い、かわいい化け物たちのお話です。
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