作:井上荒野 絵:田中清代 出版:アリス館
とっても美味しいカレーライス。
大好きな子も多いでしょう。
でも、このカレーライスは作り方が違うみたい。
一味も二味も違うカレー作りのお話です。
あらすじ
カレーが大好きな男の子のフミオ。
いつものようにお父さん、お母さんとカレーライスを食べていました。
でも、その日はカレーライスの中に土鍋のような形をした、小さな黒い粒が入っていたのです。
お父さんが本で調べてみると、それは世にも珍しいカレーの種のようです。
さっそくお父さんは庭にカレーの種を植えました。
そして、不思議な歌と踊りを踊り始めました。
お母さんとフミオも真似をして踊ります。
次の朝、カレーの芽が出ていました。
お父さんは大きなじょうろでたくさんの水をあげました。
さらに次の朝、芽は木になってお皿の葉っぱをつけました。
さらにさらに次の朝、木に福神漬けの花が咲きました。
次の朝にはついに小さな実がなりました。
黄色い実はカレーの実。
白い実はライスの実でした。
カレーの実はとても弱いようなので、家族みんなで一生懸命世話をします。
やがて、実はすっかり大きくなって、今にもはじけそうです。
そこで、いよいよカレーの実を食べることにしました。
お皿の葉っぱに、カレーの実とライスの実の中身を出して、福神漬けの花を添えます。
世にも珍しい、木から出来たカレーライス。
そのお味はいかがなものでしょう。
『ひみつのカレーライス』の素敵なところ
- 一本の木でカレーに必要なものが全部出来てしまう
- 木の成長のワクワク感を高める、ページ構成とフレーズ
- とにかくカレー(+福神漬け)が食べたくなる
カレーが木から出来るという発想もとっても面白いのですが、その木からお皿から福神漬けまで全部そろえてしまう発想がさらに面白いところです。
それが、しっかりと植物の成長になぞらえられていて、皿を葉っぱに見立てたり、福神漬けを花に見立てたり、無理なく自然に成長していくのが本当に面白いです。
だからこそ、子どもたちも自然にカレーライスの木を受け入れているのでしょう。
子どもたちがカレーの木の成長を見守る眼差しは、まるで本当の木が成長するのを見守るようです。
「芽が出たよ!」
「もう木になった!しかも葉っぱがお皿になってる!」
「カレーのお花ってかわいいんだね」
と、成長図鑑を見るよう。
そして、この成長のワクワク感は、「次の朝」というフレーズで次のページに行く構成により、さらに高められます。
「次の朝」に反応して、「次はどうなるんだろう・・・?」と次のページを息を潜めて待つ姿からはワクワク感がにじみ出ていました。
そうこうしているうちに、カレーの実も熟し、いよいよ食べごろに。
この絵本最後の見せ場、カレー祭りが始まります。
その美味しそうなこと。
もう、読んだらその後のご飯はカレーに決まりでしょう。
もちろん、らっきょうではなく福神漬けで。
そんな、木からカレーが出来るという不思議が満載ながら、結局カレーが食べたくなる絵本です。
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