著者:村山斉 出版:幻冬舎
昔、宇宙の図鑑を熟読し、ブラックホールや太陽、ビッグバンに宇宙の膨張などなど、宇宙の不思議に胸を躍らせ目をキラキラさせていた人たち。
そんな人にぜひ読んでもらいたい一冊です。
こんなことまでわかっているのか、こんなに面白い謎があるのかとあの頃のワクワクが蘇り、暗黒物質や暗黒エネルギーなどなど、読んだ後に他の人に伝えたいという気持ちに駆られることでしょう。
『宇宙は何でできているのか』の素敵なところ
- 入門書としてかなりわかりやすい解説と例え
- それでも結構難しいので体系的に理解し尽くすのは大変
- だけど、全部を理解しきれなくてもワクワクは十二分に感じる
- ノーベル賞受賞者の功績がマジですごいことを思い知らされる
素粒子物理学の入門書として、かなり難解な自然科学の分野をとてもわかりやすくかみ砕いて説明してくれています。
例えも粒子の大きさの対比などをりんごに例えるなどわかりやすく工夫してくれていたり、ノーベル賞受賞者のおちゃめなエピソードを取り入れるなど、読みやすい工夫をしてくれています。
しかし、特に素粒子についての内容は入門書といえど専門知識や専門用語もたくさん出てきます。
そのため、一つ一つの知識はなんとなくわかってきたけれど、つなぎ合わせて体系的に理解するにはかなり読み込む必要があると思います。
ただ、その部分をガチガチに理解しなくても、その発見によってどんなに研究が進歩したかは感じ取れるし、それが宇宙の謎の解明にどうつながったか、それによって生まれたさらなる謎にワクワクする気持ちは十二分に味わえると思います。
なので、まずは気楽にわかったつもりで読み進めていき、琴線に触れた部分は人に話せるくらい読み込むというスタンスがおすすめです。
また、この本ではノーベル賞受賞者やその発見についてたくさん出てきます。
ニュートリノもその一つです。
僕は恥ずかしながら、ノーベル賞の受賞のニュースでニュートリノという言葉は聞いたことがありましたが詳しくは知りませんでした。
この本でその意義を知った時、とんでもない発見だと思い知らされ、日本にいながらそれを知らなかったのが正直恥ずかしいと感じました。
他にもたくさんノーベル賞を取った発見が出てきますが、そのどれもが常識を覆す、もしくは研究を次の段階に進めるようなものばかりでした。
これらのことを教養としてまとめて知るにもとてもおすすめです。
『宇宙は何でできているのか』からもらったエッセンス
- 宇宙には意味の分からない謎がまだまだある
- 素粒子は奥が深すぎる
- 人の体は星屑でできている
宇宙の主役は惑星や星々だとばかり思っていました。
しかし、それでは質量が足りず、天の川銀河に太陽系がとどまっていられないという計算結果が出ました。
その結果、太陽系をとどまらせておくだけの重力を発生させているなにかがあることがわかりました。
それが「暗黒物質」です。
しかし、それも宇宙全体で見ればほんの一部。
さらに宇宙の大部分7割以上を占めるのが「暗黒エネルギー」と呼ばれるものです。
これはなんと宇宙の膨張を加速させているエネルギーだと予測されているのです。
さて、光を見るというのは昔の宇宙を見るということです。
なぜなら、一光年離れた星から発せられ届いた光は1年前にその星から発せられた光だからです。
なのでその光を追っていくと古代の宇宙の姿がわかるのです。
ですが、宇宙の始まりから2億年ほどの期間は見ることは出来ないといいます。
それはなぜか・・・星がまだ出来ていないので光がないためです。
それならばと電波から見る手法が取られました。
しかしこれにも限界が。
宇宙誕生から38万年の間は宇宙があまりにも熱く原子が原子の状態を保てない。
そんな中では電波がまっすぐに飛ばず見ることが出来ないそうです。
そこで宇宙の始まりが原子よりも小さな素粒子の世界ならと、素粒子の側から宇宙の誕生や法則を研究することになったというのです。
しかし、これがまた奥が深く、新たな素粒子が発見されては新たな仮説が立てられてを繰り返し、「標準模型」というのもが確立しました。
「物質が何からできていて、それはどんな基本法則に支配」されているのかの現時点での答えとのこと。
その中には原子を原子として繋ぎとめる力のメカニズムなど、頭の片隅にもなかった力の働きなどが出てきて面白いです。
最後にこの本の中で出てくるとてもロマンチックで大好きなフレーズを紹介します。
「人の体は星屑で出来ている」
人の体を構成する炭素などの原子は宇宙の誕生からは作られませんでした。
宇宙の誕生から生じた原子が星になり、その星の中に新たな原子が作られます。
しかしそれが放出されるのはその星が爆発した時。
そして放出された新たな原子をもとに新たな星になりを繰り返した結果炭素などの人の体を構成する原子が出来たというのです。
この話自体もロマンチックで素敵です。
でも、これがわかるためには宇宙という「大きな」研究と素粒子という「小さな」研究の長い長い積み重ねがあったからです。
それもまたロマンあふれる話だなと思います。
少し難解ですが、この本にはかつて宇宙にロマンを抱いて図鑑やテレビの特集を見ていた頃の気持ちを思い出させてくれる「熱さ」があります。
ぜひ、日頃自然科学に触れない方も読んでみてください。
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