作:佐々木マキ 出版:フレーベル館
雲に乗り、不思議な術を使う仙人。
眠らせる術や、分身の術などなど。
とても仙人らしい仙人の、人助けの絵本です。
あらすじ
山のてっぺんに仙人が住んでいた。
修行をしていると、山のふもとから誰かの困った声が聞こえてきた。
仙人が雲に乗って、声のする方へ行ってみると、郵便屋さんが倒れていた。
話を聞くと、気分が悪くなってしまったとのこと。
それでも、配達を続けようとする郵便屋さんに仙人は術をかけて眠らせた。
そして、分身の術を使い、9人の分身を出して郵便配達をすることに。
配達が終わったころ、郵便屋さんは目を覚まし、気分もだいぶ良くなっていた。
郵便屋さんは仙人に礼を言い、バイクに乗って帰っていった。
一件落着・・・と思いきや、仙人がふと足元を見ると、一通の手紙が残っていた。
仙人は自分で届けることにしたが、書いてある住所がわからなかった。
すると、草むらから子どもが顔を出した。
子どもはその住所を知っているから案内してくれると言う。
仙人はついていくことにした。
無事に手紙を届けられるのでしょうか。
『10にんのせんにん』の素敵なところ
- 「仙人」と「千人」をかけた言葉遊び
- THE・仙人といったお手本のような仙人像
- 一番最後で、最初のページの伏線回収
この絵本には「仙人と言っても、一人だよ」のように、「仙人」と「千人」をかけた言葉遊びが、さりげなく取り入れられています。
タイトルに「10にんの」を入れたのも、きっと同じ理由だと思います。
なかなか気付きませんが、気付くと「仙人って千人と一緒だ!!」と物凄くテンションが上がります。
子どもは虎の首を取ったかの如く、その発見を教えてくれます。
そんなこの絵本に出てくる仙人は、THE・仙人と言えるくらい、物凄くステレオタイプな仙人です。
山の上に住み、白くて長い髭が生え、杖を持って、雲に乗ります。
髭を抜き息を吹きかけると、分身が現れ自在に操れるなど、まさに仙人。
仙人を知らない子も、「これが仙人か・・・」と仙人がどういうものかが大体わかります。
わかりやすい仙人のわかりやすい人助けという物語は、誰が見ても面白く、仙人の術に憧れるものです。
しかし、それだけでは終わらないのが面白いところです。
最後に配り忘れた手紙を見つけ、届けに行くことになります。
なんとこの手紙の伏線が、まだ文章の始まっていない、タイトルが書いてあるページに張られているのです。
なんとなく読み飛ばしていたら、それが最後に回収されるおもしろさ。
「あ!この子って!」
とその場で気づく子もいれば、読み直した時に「あ!」と気付く子もいます。
わかりやすい仙人の正統な面白さ。
そこに伏線や言葉遊びのスパイスが見事に織り込まれた、味わい深い絵本です。
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