10にんのせんにん(3歳~)

絵本

作:佐々木マキ 出版:フレーベル館

雲に乗り、不思議な術を使う仙人。

眠らせる術や、分身の術などなど。

とても仙人らしい仙人の、人助けの絵本です。

あらすじ

山のてっぺんに仙人が住んでいた。

修行をしていると、山のふもとから誰かの困った声が聞こえてきた。

仙人が雲に乗って、声のする方へ行ってみると、郵便屋さんが倒れていた。

話を聞くと、気分が悪くなってしまったとのこと。

それでも、配達を続けようとする郵便屋さんに仙人は術をかけて眠らせた。

そして、分身の術を使い、9人の分身を出して郵便配達をすることに。

配達が終わったころ、郵便屋さんは目を覚まし、気分もだいぶ良くなっていた。

郵便屋さんは仙人に礼を言い、バイクに乗って帰っていった。

一件落着・・・と思いきや、仙人がふと足元を見ると、一通の手紙が残っていた。

仙人は自分で届けることにしたが、書いてある住所がわからなかった。

すると、草むらから子どもが顔を出した。

子どもはその住所を知っているから案内してくれると言う。

仙人はついていくことにした。

無事に手紙を届けられるのでしょうか。

『10にんのせんにん』の素敵なところ

  • 「仙人」と「千人」をかけた言葉遊び
  • THE・仙人といったお手本のような仙人像
  • 一番最後で、最初のページの伏線回収

この絵本には「仙人と言っても、一人だよ」のように、「仙人」と「千人」をかけた言葉遊びが、さりげなく取り入れられています。

タイトルに「10にんの」を入れたのも、きっと同じ理由だと思います。

なかなか気付きませんが、気付くと「仙人って千人と一緒だ!!」と物凄くテンションが上がります。

子どもは虎の首を取ったかの如く、その発見を教えてくれます。

そんなこの絵本に出てくる仙人は、THE・仙人と言えるくらい、物凄くステレオタイプな仙人です。

山の上に住み、白くて長い髭が生え、杖を持って、雲に乗ります。

髭を抜き息を吹きかけると、分身が現れ自在に操れるなど、まさに仙人。

仙人を知らない子も、「これが仙人か・・・」と仙人がどういうものかが大体わかります。

わかりやすい仙人のわかりやすい人助けという物語は、誰が見ても面白く、仙人の術に憧れるものです。

しかし、それだけでは終わらないのが面白いところです。

最後に配り忘れた手紙を見つけ、届けに行くことになります。

なんとこの手紙の伏線が、まだ文章の始まっていない、タイトルが書いてあるページに張られているのです。

なんとなく読み飛ばしていたら、それが最後に回収されるおもしろさ。

「あ!この子って!」

とその場で気づく子もいれば、読み直した時に「あ!」と気付く子もいます。

わかりやすい仙人の正統な面白さ。

そこに伏線や言葉遊びのスパイスが見事に織り込まれた、味わい深い絵本です。

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