作:tuperatupera 出版:PHP研究所
大人も子どもも、人も動物も、巨人も小人もみんなそれぞれ。
顔も形も動き方もみんなぞれぞれ。
みんなそれぞれだから、この世界は面白い。
あらすじ
みんなそれぞれ「歩く」。
男の子が張り切って歩く。
鳥が歌いながら歩く。
巨人が踏まないように歩く。
それぞれ色々な歩き方。
みんなそれぞれ「とぶ」。
虫がぴょんと跳ぶ。
風船がふわりと飛ぶ。
魔女がなにかを企みながら飛ぶ。
それぞれ色々なとび方。
みんなそれぞれ「走る」。
亀が自分のペースで走る。
警察が何とか捕まえたいので走る。
泥棒が出来れば捕まりたくないので走る。
それぞれ色々な走り方。
みんなそれぞれの「伸びる」「泳ぐ」「迷う」「隠れる」「踊る」「食べる」「見る」がある。
『みんなそれぞれ』の素敵なところ
- 色々な「みんな」の、色々なそれぞれ
- たくさんの豊かな形容詞
- ページ内のそれぞれが緩く関連しあっている
この絵本は「歩く」「とぶ」などのカテゴリーごとに、それぞれ3ページずつ描かれています。
その中には色々な「みんな」の、それぞれの歩き方や、走り方が出てきます。
その「みんな」は現実の色々な生き物から、巨人や魔女のような空想の生き物まで様々です。
この様々な種族が出てくることにより、人間の枠を超え、世界のそれぞれを感じさせてくれます。
そして、単純に見ていて面白いのです。
さて、言葉遊びの要素があるこの絵本。
ベースは普段当たり前に使っている言葉たちです。
ですが、この絵本には様々なバリエーション豊かな形容詞が、ふんだんに使われています。
「必死に」「息をひそめて」「欲張って」「すくすく」「ぐんぐん」などなど、様々な言葉が前に着くと、いつも使っている言葉も全然違うもののようです。
また、「すくすく」伸びると「ぐんぐん」伸びる。
「ぴょん」と跳ぶ、「ぴょーん」と跳ぶ。
など、ニュアンスで使い分ける言葉もたくさん出てきます。
これらもわかりやすい絵で描かれていることで、とてもわかりやすく頭に入ってきます。
それぞれの言葉がこの象徴的な絵と組み合わさって、生きた言葉として読み手に届くのです。
さらに、それぞれの言葉と絵がページ内で緩く繋がり合っているのも、この絵本の魅力的なところです。
決して言葉遊びだけで終わらないのも、この部分があるからこそ。
「バスが待たずに走る」「乗ろうとしている人が慌てて走る」
「ライオンが狙いを定めて隠れる」「ウサギが息をひそめて隠れる」
「伸びる」のカテゴリーでは、伸びたピノキオの鼻の上で展開される。
など、緩く繋がり、そこに緩い物語性があるのです。
それにより、読んでいて飽きず、言葉の羅列に終わらない、物語としての面白さもあるのです。
それぞれの種族、それぞれの言葉、それぞれの動き、それぞれの違い。
それらたくさんのそれぞれを、目と耳と頭と心で感じさせてくれる絵本です。
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