プレッツェルのはじまり(4歳~)

絵本

作:エリック・カール 訳:アーサー・ビナード 出版:偕成社

特徴的な形のプレッツェル。

そんなプレッツェルが、どうやって出来たのか知っていますか?

なぜ、あんな形をしているのか?なぜ、あんな食感なのか?

その秘密がすべて詰まったお話です。

あらすじ

昔々、ある国にウォルターというパン屋さんがいました。

ウォルターは国一番のパン職人でした。

なので、妻のアンナ、息子のウォルトと一緒やっているパン屋は大繁盛。

王様と女王様へも毎日パンを届けるほどでした。

けれど、ある日のこと。

ウォルターが朝早くにパン作りの仕込みをしていると、ネコが牛乳の樽を倒してしまいました。

牛乳が使えなくなり、ひとまず水でロールパンを作ることにしたのです。

ほとんどの客は味の違いに気付きませんでした。

しかし、王様と女王様はすぐに気付き、怒ってウォルターを城に呼びつけました。

そして、ある宿題を言い渡しました。

それは、新しいパンを次の朝までに発明すること。

そのパンは朝日が3つ差してくる、最高に美味しいパンであることでした。

これが出来なければ、ウォルターを国から追い出すと言うのです。

ウォルターはさっそくパン作りに取り掛かりました。

しかし、いくら考えても、こねても、伸ばしても満足いくものは出来ません。

そうこうしているうちに夜が明けてしまいました。

ウォルターはやけくそで、伸ばした生地を空に放り投げました。

天井に張り付き、もつれながら落ちてくる生地。

そのままバケツの水の中に入ってしまいました。

ですが、息子のウォルトがバケツの中をのぞくと、不思議な形になっていることに気付きました。

妻のアンナがそれをすぐにオーブンに入れ、焼き上げます。

するとどうでしょう。

ちょっと固くて、でもモチっとしています。

さらに、3つの穴が空いていて、そのパンを朝日にかざすと朝日が3つに見えるのです。

ウォルターはさっそくそのパンをお城に届けました。

王様と女王様の反応はどうでしょう。

ウォルターはこの国でパン屋を続けることが出来るのでしょうか。

『プレッツェルのはじまり』の素敵なところ

  • とても美味しそうなウォルターのパン
  • たくさんの偶然が重なったドキドキワクワクの物語
  • きっと朝日にかざしたくなる、ロマンチックな誕生秘話

この絵本で登場するのはプレッツェルだけではありません。

モチモチのロールパン。

ずっしりとしたライ麦ブレッド。

星形のパンに、甘いパイなど、たくさんのパンが出てきます。

それらはどれも香ばしくて美味しそう。

中でも、王様と女王様が食べている場面では、ジャムやはちみつをぬって食べる姿とその描写で、口の中にふんわり甘いパンの味と、濃厚なジャムやはちみつの味が広がってくるようです。

そんな中、事件が起こります。

「国を出て行け」と絶体絶命のウォルター。

希望が見えたと思いきや、出された宿題は無理難題。

これには子どもたちも

「えー、無理だよ・・・」

「次の朝までになんて出来ない!」

と頭を抱えるほどです。

そして、無情にも時間は過ぎ朝日が昇ります。

もう無理だと思われたとき、偶然が重なり奇跡が!

放り投げられた生地に、子どもたちの目は釘付けです。

ウォルトが拾い、アンナがオーブンに入れ・・・。

そしてウォルターの手にあるのはまさにプレッツェル!

それを見るウォルターの顔には驚きと喜びが浮かんでいます。

それを見ている子どもたちの顔にもウォルターと同じ表情が浮かんでいるのがおもしろいところ。

「本当にプレッツェルだ!」

「間に合った!」

とウォルターと完全にリンクしているようでした。

そんなプレッツェルの穴からは朝日が3つ見えています。

これを見てしまったら、実際にやらないわけにはいきません。

そして、「この穴は朝日を見るためにあるんだよ」と語らないわけにもいきません。

そこにはプレッツェルをパンとしてではなく、物語にしてしまうというロマンチックな魅力があるのです。

プレッツェルが生まれるまでのワクワクドキドキの物語。

プレッツェルの変わった形のロマンチックな理由がわかる物語。

そんなプレッツェルを食べたくなるだけでなく、天にかざしたくなる昔々のお話です。

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