まほうをわすれたまほうつかい(4歳~)

絵本

作:デイビッド・マッキー 訳:安西徹雄 出版:アリス館

なんでも出来る魔法使い。

王様にも国中のみんなにも頼られっぱなしです。

でも、そんな魔法使いが魔法を忘れてしまったら・・・。

自分も国も一体どうなってしまうのでしょう。

あらすじ

ある国に、王様お抱えの魔法使いメルリックが住んでいました。

メルリックは毎日王様の用事を魔法で済ますと、町のみんなの仕事も魔法で助けていました。

メルリックが全てやってくれるので、みんなはなにもすることがありませんでした。

ある朝、メルリックは朝の支度をする魔法の呪文を唱えました。

しかし、何も起こりません。

色々な呪文を唱えてみますが、やっぱりなにも起こらないのです。

ひとまず、大急ぎで王様の元へ行き、その日の用事を魔法で片付けようとしてみましたが、やはりなにも起こりません。

王様も気付きました。

メルリックの魔法の力がなくなってしまったことに。

魔法の力がなくなったことを敵国に知られれば、この機に攻め入ってくることでしょう。

町の人も、全部自分の力でやらなくてはいけなくなって大騒ぎに。

早く魔法の力を取り戻さなくてはいけません。

メルリックは妹もマーテルの所へ行き、力を貸してもらうことにしました。

マーテルは森の奥の地面の下に住んでいます。

メルリックはへとへとになりながら到着しました。

そこで、呪文をかけてもらったり、苦い薬を飲んでみましたが、魔法の力は戻りません。

マーテルは魔法のほうきを貸してくれ、従弟のガズを訪ねるように言いました。

ガズは不思議な島に住んでいました。

ガズも呪文をかけてくれたけれど、やはりメルリックの魔法の力は戻りません。

ガズはため息をつきながら、クラ先生のところへ行くよう言い、魔法でクラ先生の住む山まで飛ばしてくれました。

山のふもとに着陸したメルリックは、山を登っていきました。

山のてっぺんにクラ先生はいました。

メルリックはこれまで国や町の人のためにしてきたことなど、クラ先生に一生懸命話しました。

しかし、クラ先生は「お前のしたことは魔法の無駄遣い。人の助けにはなっていない」と言うのです。

メルリックは反論しましたが、クラ先生は言いました。

「なにもかもみんなのためにしたおかげで、お前だけを頼りにするようになり、魔法がきかなくなると自分では何もできなくなった。それがみんなを助けることか?」と。

これにはメルリックも何も言い返せませんでした。

クラ先生はメルリックに魔法の力を返してくれました。

「もう一度、無駄に使ったら、もう絶対に戻らんぞ」と忠告をして。

メルリックは鳥に変身すると、大急ぎで国に戻りました。

すると、国が敵国に攻められているではありませんか。

魔法の力が戻ったメルリックは、一体どうするのでしょうか。

『まほうをわすれたまほうつかい』の素敵なところ

  • 魅力的なキャラクターに世界観
  • 色のあるページと、色のないページが交互になっている不思議な色使い
  • 何かに甘えきりになってはいけないことを伝えてくれる

この絵本にはファンタジーな世界観が見事に詰まっています。

魔法で何でもできる国。

森の穴の中にある魔女の家。

不思議な動物がたちのいる不思議な島。

魔法使いがてっぺんに住む山などなど。

魅力的なロケーションの数々が登場します。

それだけじゃなく、魔法のほうきや人を飛ばす魔法、鳥になって空を飛ぶなど、そこに出てくる魔法も多種多様で、魅力的です。

また、その世界に住む人々も一度見たら忘れられない個性的な人ばかり。

主人公のメルリックはもちろん、まさに魔女な妹のマーテル、ずんぐりむっくりの従弟ガズ、ひげもじゃで眼光鋭い厳しさいクラ先生。

どの人物も魅力に溢れています。

この世界観で、この人物たちが織り成す魔法を取り戻す物語は、まさにドキドキワクワクの大冒険。

子どもたちは予想のつかない展開に、しゃべることも忘れて見入っていました。

この世界観にさらに不思議な魅力を足しているのが、不思議な色使いです。

なんとこの絵本は色のついたページと、白黒のページが交互にやってくるのです。

色彩が物凄く色鮮やかに描かれていることもあり、色のあるページのインパクトが物凄く増幅されます。

でも、色のないページもその色彩が頭に残っているからか、違和感なく入ってくるのが不思議なところ。

気付くと、色のあるなしを、ほとんど忘れて物語の世界に入り込んでい待っています。

きっと、塗り絵のように楽しんで、自分だけの『まほうをわすれたまほうつかい』を作り上げても楽しいんだろうなと思います。

さて、そんなドキドキワクワクの魅力的な物語ですが、とても大切なことを伝えてくれます。

それは「なんでもやってあげる」ことが本当の優しさではないことです。

これは魔法を越えて、たくさんの身近なことに当てはまります。

小さい子のお世話、友だちの手伝いなどやってあげる側として。

また、親にやってもらう、先生にやってもらうといったやってもらう側として。

全部やってあげるだけが優しさではないこと。

全部やってもらっていたら、自分が町のみんなのようになってしまうこと。

そんなことをメルリックや魔法を通して伝えてくれるのです。

ファンタジーの世界にどっぷりと浸からせてくれる。

魅力的なキャラクターたちを通して、本当の「優しさ」を伝えてくれる絵本です。

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