とりのみじいさん(4歳~)

絵本

文:小沢正 画:長谷川知子 出版:教育画劇

色々な飲み物を飲むと思いますが、鳥を飲んだ人は中々いない。

誤って鳥をごくんと飲んでしまったら、どんなことが起こるのか。

まさに奇想天外、摩訶不思議な昔話です。

あらすじ

昔々あるところに、おじいさんがいました。

おじいさんが野良仕事を休憩していると、一羽の小鳥が木の上でさえずっていました。

おじいさんは小鳥が可愛かったので、そばに来るよう呼んでみました。

小鳥は、おじいさんの側に立てかけてあったくわの上にとまりました。

気分を良くしたおじいさんは、今度は自分の舌の上で鳴いてみないかと舌を出してみました。

すると、小鳥はおじいさんの舌の上にとまり鳴き始めたのです。

これを見ておじいさんは大笑い。

その拍子に「ごくん」。

うっかり小鳥を飲み込んでしまいました。

おじいさんは、なんとか小鳥を助けられないものかとお腹をさすっていると、おへそから小鳥の尻尾がちょこんと出ていました。

尻尾を引っ張れば出してやれるかもと、しっぽを引っ張ってみると・・・。

なんと、「あやちゅうちゅう、こやちゅうちゅう」とへんてこなおならが出るではありませんか。

びっくりしたおじいさんは、家へ飛んで帰って、おばあさんにもこのおならを聞かせました。

これにはおばあさんもびっくり。

おばあさんは「お殿様にもこのおならを聞かせてあげたら喜ぶんじゃないかしら」と言いました。

おじいさんもその気になり、さっそく出かけました。

しかし、お殿様には簡単に会えるものではありません。

そこで、お殿様の竹やぶに行き、勝手に竹を切り始めたではありませんか。

この竹やぶは竹を勝手に切ってはいけません。

ですが、きっとお殿様の目にはとまります。

それを狙ってのことでした。

そうこうしていると、いよいよお殿様の大名行列が竹やぶの前へやってきました。

狙い通り、竹を切っているおじいさんを見て、お殿様が籠から出てきます。

そこでおじいさんは名乗りました。

「自分は日本一のおならじじい。世にも珍しいおならを聞かせます」と。

お殿様はおもしろがって、「やってみるがいい」と言いました。

おじいさんがおへその尻尾を引っ張ると、へんてこなおならが。

これにはお殿様も大笑い。

お腹を抱えて笑いました。

おじいさんはお殿様にたくさんの褒美をもらい、家へと帰っていきました。

その話を聞いて羨ましくなったのは隣の欲張り爺さん。

小鳥を捕まえ飲み込むと、竹やぶに向かいました。

そして勝手に竹を切っていると、やはりお殿様が。

欲張り爺さんの計画は果たしてうまくいくのでしょうか。

『とりのみじいさん』の素敵なところ

  • リズミカルで思わず笑ってしまうおなら
  • 漫画調の楽しく見やすい絵
  • 王道と予想外の絶妙なバランス

この絵本はなにを置いてもまずおならです。

題材がおならというだけで、もう子どもへの掴みはばっちりです。

そしてただのおならではないからなおさら。

おじいさんのおならは小鳥と融合したことで

「あやちゅうちゅう、こやちゅうちゅう、にしきさらさらごよのまつ、たべてもうせば、びびらびんびん、ぷっくぷうのぷう」

という、素敵で楽しいおならになってしまったのでさあ大変。

子どもはおならだけでも大笑いなのに、さらにこんなおもしろいおならだったので大笑いの大笑い。

笑いの渦に包み込まれます。

また、リズミカルで聞いていて心地よく、汚い感じが少しもしません。

それどころか、上品にさえ感じさせてくれます。

この楽しさをさらに盛り上げてくれるのが、漫画調の楽しい雰囲気で見やすい絵です。

登場人物の本文にない「アレ~!」とおばあさんが驚くセリフや、小鳥からは「ぴいぴいぴい」とさえずる声が出ていたりします。

しかし、それだけなくおもしろいおならの音が、おならの吹き出しの中に書かれていて、おじいさんのおしりから出るようになっていたり、その文字にカラフルな色が使われていたりと、漫画のような視覚的なおもしろさもプラスされているのです。

これらにより、子どもたちはさらに楽しくなってしまいます。

鳥を飲み込んだら、おへそから尻尾が生えて、世にも珍しいおならが出るようになったという、奇想天外なお話ですが、予想外だけじゃないのもおもしろいところです。

予想外の展開にハラハラドキドキ大笑いした子どもたちですが、最後には昔話のお約束が待っています。

それが欲張り爺さんです。

これまでの経験から絶対に失敗することがわかります。

完全なる予定調和です。

これには子どもたちも「絶対やめたほうがいいって!」と、欲張り爺さんを止めようとしますが、欲張り爺さんは聞く耳を持ちません。

そうして、予想通りの結末に・・・。

この前半の奇想天外さと、後半の昔話の王道さのバランスが絶妙なのです。

まさに実家のような安心感。

予想外の展開の連続に笑い転げるくらいおかしく楽しい。

でも、昔話ならではの安定感も忘れない昔話絵本です。

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