文:小沢正 画:長谷川知子 出版:教育画劇
色々な飲み物を飲むと思いますが、鳥を飲んだ人は中々いない。
誤って鳥をごくんと飲んでしまったら、どんなことが起こるのか。
まさに奇想天外、摩訶不思議な昔話です。
あらすじ
昔々あるところに、おじいさんがいました。
おじいさんが野良仕事を休憩していると、一羽の小鳥が木の上でさえずっていました。
おじいさんは小鳥が可愛かったので、そばに来るよう呼んでみました。
小鳥は、おじいさんの側に立てかけてあったくわの上にとまりました。
気分を良くしたおじいさんは、今度は自分の舌の上で鳴いてみないかと舌を出してみました。
すると、小鳥はおじいさんの舌の上にとまり鳴き始めたのです。
これを見ておじいさんは大笑い。
その拍子に「ごくん」。
うっかり小鳥を飲み込んでしまいました。
おじいさんは、なんとか小鳥を助けられないものかとお腹をさすっていると、おへそから小鳥の尻尾がちょこんと出ていました。
尻尾を引っ張れば出してやれるかもと、しっぽを引っ張ってみると・・・。
なんと、「あやちゅうちゅう、こやちゅうちゅう」とへんてこなおならが出るではありませんか。
びっくりしたおじいさんは、家へ飛んで帰って、おばあさんにもこのおならを聞かせました。
これにはおばあさんもびっくり。
おばあさんは「お殿様にもこのおならを聞かせてあげたら喜ぶんじゃないかしら」と言いました。
おじいさんもその気になり、さっそく出かけました。
しかし、お殿様には簡単に会えるものではありません。
そこで、お殿様の竹やぶに行き、勝手に竹を切り始めたではありませんか。
この竹やぶは竹を勝手に切ってはいけません。
ですが、きっとお殿様の目にはとまります。
それを狙ってのことでした。
そうこうしていると、いよいよお殿様の大名行列が竹やぶの前へやってきました。
狙い通り、竹を切っているおじいさんを見て、お殿様が籠から出てきます。
そこでおじいさんは名乗りました。
「自分は日本一のおならじじい。世にも珍しいおならを聞かせます」と。
お殿様はおもしろがって、「やってみるがいい」と言いました。
おじいさんがおへその尻尾を引っ張ると、へんてこなおならが。
これにはお殿様も大笑い。
お腹を抱えて笑いました。
おじいさんはお殿様にたくさんの褒美をもらい、家へと帰っていきました。
その話を聞いて羨ましくなったのは隣の欲張り爺さん。
小鳥を捕まえ飲み込むと、竹やぶに向かいました。
そして勝手に竹を切っていると、やはりお殿様が。
欲張り爺さんの計画は果たしてうまくいくのでしょうか。
『とりのみじいさん』の素敵なところ
- リズミカルで思わず笑ってしまうおなら
- 漫画調の楽しく見やすい絵
- 王道と予想外の絶妙なバランス
この絵本はなにを置いてもまずおならです。
題材がおならというだけで、もう子どもへの掴みはばっちりです。
そしてただのおならではないからなおさら。
おじいさんのおならは小鳥と融合したことで
「あやちゅうちゅう、こやちゅうちゅう、にしきさらさらごよのまつ、たべてもうせば、びびらびんびん、ぷっくぷうのぷう」
という、素敵で楽しいおならになってしまったのでさあ大変。
子どもはおならだけでも大笑いなのに、さらにこんなおもしろいおならだったので大笑いの大笑い。
笑いの渦に包み込まれます。
また、リズミカルで聞いていて心地よく、汚い感じが少しもしません。
それどころか、上品にさえ感じさせてくれます。
この楽しさをさらに盛り上げてくれるのが、漫画調の楽しい雰囲気で見やすい絵です。
登場人物の本文にない「アレ~!」とおばあさんが驚くセリフや、小鳥からは「ぴいぴいぴい」とさえずる声が出ていたりします。
しかし、それだけなくおもしろいおならの音が、おならの吹き出しの中に書かれていて、おじいさんのおしりから出るようになっていたり、その文字にカラフルな色が使われていたりと、漫画のような視覚的なおもしろさもプラスされているのです。
これらにより、子どもたちはさらに楽しくなってしまいます。
鳥を飲み込んだら、おへそから尻尾が生えて、世にも珍しいおならが出るようになったという、奇想天外なお話ですが、予想外だけじゃないのもおもしろいところです。
予想外の展開にハラハラドキドキ大笑いした子どもたちですが、最後には昔話のお約束が待っています。
それが欲張り爺さんです。
これまでの経験から絶対に失敗することがわかります。
完全なる予定調和です。
これには子どもたちも「絶対やめたほうがいいって!」と、欲張り爺さんを止めようとしますが、欲張り爺さんは聞く耳を持ちません。
そうして、予想通りの結末に・・・。
この前半の奇想天外さと、後半の昔話の王道さのバランスが絶妙なのです。
まさに実家のような安心感。
予想外の展開の連続に笑い転げるくらいおかしく楽しい。
でも、昔話ならではの安定感も忘れない昔話絵本です。
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