作:イ・ミョンエ 訳:生田美保 出版:ポプラ社
新しく生まれていく島。
そこは綺麗な色で溢れ、渡り鳥たちの休憩場所にもなっている不思議な島。
そんな島の材料は流れ着いたあるもので出来ていた。
大きな社会問題を、わかりやすくも芸術的に描き出す絵本です。
あらすじ
ぼくは海の真ん中に浮かぶ、色の溢れる島に住んでいる。
その色たちは川を流れて少しずつ海へ来たり、嵐で一気に海へ押し寄せてくる。
渡り鳥たちは、この島を見てびっくりするけど、すぐに慣れていく。
色を噛んだり、身にまとってみたり、気付かないうちに食べてしまったり。
色の欠片が増えるにつれて、ぼくらの好きな魚が段々減ってきている気がする。
時々人が来ては集めて持ち帰るけれど、すぐにまた色でいっぱいになってしまう。
一体、この島の色の正体とは・・・。
『いろのかけらのしま』の素敵なところ
- よく見ると見覚えのある色の欠片
- 鳥の目線で、とてもわかりやすく描かれる身近で大きな社会問題
- 色の正体がわかったると、全く違った物語に見えてくる
この絵本のキーワード「色の欠片」。
とっても鮮やかでカラフルで、魅力的な色、色、色。
でも、よく見ると見覚えのあるものばかり。
ペットボトルに、ビニール、タイヤなどなど。
どれも家の周りにある「色」です。
子どもたちも無邪気に「あ、タイヤじゃない!?」「ペットボトル!」と絵探しのように楽しんでいます。
そんな見覚えのある「色の欠片」の物語は、一匹の鳥である「ぼく」の目線で語られます。
色が海へ運ばれてくること、友だちの渡り鳥が驚きつつも慣れてしまうこと、色が増えると魚が減っている気がすること・・・。
これらが鳥の目線をとることで、ただ見たままに語られます。
そこには善悪はなく、ただただ中立的に、事実としてのみ語られるのです。
そして、最後に明かされる「色の欠片」の正体。
それを知った時、この絵本の顔色が大きく変わって見えます。
楽しそうに、色の正体を純粋に予想していた子も真剣な顔になります。
「色の欠片」の正体を知ったあとに、ページをめくってみると、楽しく絵探しをする子どもの姿はどこにもありません。
「かわいい!」「帽子みたいだね」と言っていた、頭につけたペットボトル。
「ドレスみたい!」と言っていた、体に巻かれたビニールなど。
その残酷さに気付くのです。
しかしこれは、それだけこの社会問題を真剣に残酷だと感じている証拠でもあります。
ゴミを捨てるということは、どこかに流れ着いたり、どこかで誰かを苦しめているかもしれないということを、苦しんでいる当事者の目線で伝えてくれるのです。
きっとこういうところから得た感情が、ポイ捨てへの嫌悪感や、リサイクルの大切さに繋がっていくのだろうと思います。
鳥の目線を通すことで、今起こっている事実をわかりやすくありのままに伝えてくれる。
それを通して、たくさんのことを考えるきっかけをくれる絵本です。
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