作:エリック=カール 訳:もりひさし 出版:偕成社
手が届きそうで届かないお月さま。
追いかけてくる月を振り切ろうと走ったり、高いところに上って手を伸ばしたりしたことはないでしょうか?
そんなお月さまを本当に取ることが出来たら。
そんな願いを叶えてくれる一冊です。
あらすじ
ある晩、主人公のモニカはお月さまを取ろうと手を伸ばします。
ですがなかなか届きません。
そこでパパに頼みます。
すると、長い長い梯子を持ってきて、高い高い山のてっぺんからお月さまに梯子をかけて取ろうとします。
しかし、満月だったので大きすぎて持って帰れませんでした。
満月は言います。
もう少ししたら小さくなっていくから、ちょうどいい大きさになった時に持っていきなさいと。
月が欠けていきちょうどいい大きさになったころ、パパはまたお月さまを取りに行きます。
パパはお月さまを取ってこられるのでしょうか。
そして、地上に来たお月さまはどうなるのでしょうか。
『パパ、お月さまとって!』の素敵なところ
- お月さまの取り方が子どもの発想の延長線上
- 月の満ち欠けという科学的要素が自然に取り入れられている
- 梯子の長さ、月の大きさをよりわかりやすくする仕掛け
小さい時に「もっと高いところからなら」「富士山のてっぺんからなら月に手が届くんじゃないか」と思ったことのある人は多いのではないでしょうか。
この絵本はまさにその延長線上。
出来るだけ高いところから、さらに梯子で高いところに登れば手が届くという単純明快な発想です。
しかも、梯子にも登らないといけないのがうまいところ。
実際に富士山のてっぺんまで登ったけど、手が届かないと気づいたときに夢を壊さないのです。
また、物語の中に月の満ち欠けを自然に盛り込んでいるのも素敵なところ。
満月から半月、三日月へ。
そして新月から満月へ。
小さな子どもでもその月の変化を自然に感じ、実際の月を眺めて色々な空想へ繋がっていきます。
さらに視覚効果も取り入れていて、長い梯子は見開きからさらにページが開く仕掛け。
パパが満月にたどり着いたページでもさらにページが開いて、見開きの1.5倍ほどの大きさの満月が。
「長い」「大きい」のイメージがつかみやすく、「大きい月」「小さい月」の対比もわかりやすくなっています。
やっぱり、仕掛けは子どものワクワク感を高めてくれますしね。
そんなわかりやすい中に、科学的視点、空想的視点が見事に融和した絵本です。
『パパ、お月さまとって!』のおすすめの読み方
- 全体的に優しく穏やかな調子で
- ゆっくりと絵を見る時間を取れるように読む
- お月さまが小さくなっていくときは段々小さく、大きくなっていくときは段々大きく
全編通して夜の優しい雰囲気が漂うお話です。
静かな月を眺めているような、落ち着いた穏やかな調子で読んでいきましょう。
また、文章が少ない絵本なのでページめくりをゆっくり目にして、子どもが十分に絵を楽しめるようにしていきましょう。
全体的に抑揚をつけすぎないのがおすすめです。
でも、満月から小さくなっていくときには段々声を小さくしていく。
新月から大きくなっていき、最後満月になる時には大きなお月さまが戻ってきたという嬉しさを込めて読むと、子どもたちと「よかった」という気持ちを共感しやすいと思います。
夢が詰まりつつも優しく穏やかなこの一冊。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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