ぼくのかえりみち(4歳~)

絵本

作:ひがしちから 出版:BL出版

学校からの帰り道に男の子は決めました。

「この白線から落ちたら大変なことになる・・・」と。

その瞬間、いつもの帰り道が険しい道へと変貌します。

落ちることなく無事に帰りつけるのでしょうか。

あらすじ

ある日の帰り道、男の子のそらくんは、曲がり角の道路で白線を見てつぶやきました。

「今日はこの白い線の上を、歩いて帰ろう」

そらくんは慎重に、白い線の上を歩いていきます。

トンボや、ザリガニがそらくんを誘ってきても、惑わされません。

白線から降りずに進んでいきます。

しかし、目の前に横断歩道が現れました。

そらくんは黒いところを飛び越えて、横断歩道を渡り切りました。

さらに進んでいくと、工事中で白線が途切れ、三角コーンが置かれています。

これでは通れないと思いきや、そらくんは三角コーンのてっぺんが白くなっていることに気が付きました。

「白に掴まれば大丈夫」とルールを少し足して渡りきることが出来ました。

さらに行くと、大きな犬が道をふさいでいました。

しかし、タイミングよく子犬に注意がそれたので、その隙に通り抜けることが出来たのです。

そらくんは白線から落ちずに、家にすぐ近くまで来ていました。

ですが、家まであと少しという所で、白線が途切れてしまったのです。

絶体絶命のそらくん。

家はもう目の前だというのに諦めるしかないのでしょうか。

『ぼくのかえりみち』の素敵なところ

  • いつもの日常を楽しくするマイルール
  • 心の中での白線の見え方の視覚化
  • 最後まで「白」にこだわった解決策

小学生はきっとみんなやってきたであろうマイルール。

白線から落ちたら死ぬ、小石を家まで蹴り続けられたらいいことがある、段差は崖など。

きっと色々なマイルールがあると思います。

ですが、そんなマイルールを一冊の絵本にしてしまったのが本当に素敵なところ。

このマイルール一つで、いつもの帰り道がまったく違うスリリングで楽しいものになることが、伝わってくるのです。

また、年齢によって見る目線が大きく変わるのも面白いところです。

マイルールがまだ未知の世界な子は「楽しそう!」とやってみたくなります。

もう経験している小学生や大人は「そうそう、やったやった」と、このマイルールが余すところなく描かれているを見て懐かしい気持ちになるのです。

さて、その描き方の中でも素敵だと思ったことが、そらくんの心の中で想像している白線の道を、視覚化してくれていることです。

例えば、横断歩道を渡る場面では、黒いところは崖で、そこに白い線の部分だけがそびえ立っています。

三角コーンでは、コーンだけが山のように突き出していて、それ以外は奈落の底のようになっている。

といったように、「落ちたら助からない」感が物凄いのです。

ですが、やったことのある人ならわかります。

「そうそう!やってるときはそんな気持ち」と。

この視覚化が、やったことのない子にはドキドキ感とワクワク感を。

やったことのある子にはより強い共感をもたらしてくれるのです。

しかし、このルールは中々大変です。

一筋縄ではいきません。

そんな中で「白なら大丈夫」と、少しずつルールを加えて行き、危機を乗り切っていきます。

そして、最後の「白線が途切れる」という絶体絶命のピンチでも、この「白」がキーワードになります。

ルールを加えたり、柔軟に色々な方法を使う中でも、この「白」を一貫させることにより、強引さや無理やり感を全く感じさせないのです。

その結果100%の達成感を味わえるのだと思います。

日常が刺激的になるマイルール。

やったことがある子も、これからの子も、昔やった大人も・・・。

それぞれの目線で楽しめる絵本です。

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