作:ケビン・ホークス 訳:尾高薫 出版:ほるぷ出版
小さくてかわいい赤ちゃん。
でも、その赤ちゃんがもし小さくなかったら・・・。
体は山のように大きいけれど、それ以外は赤ちゃんそのもの。
そんな大きな赤ちゃんへの愛に溢れたお話です。
あらすじ
冬一番の大雪の日に、赤ん坊が生まれた。
お姉ちゃんが弟たちと病院へ会いに行くと、赤ん坊はお姉ちゃんの指をむぎゅっと握った。
でも、赤ん坊の手は大きすぎて、お姉ちゃんの手まで握っている。
赤ん坊はトディと名付けられた。
次の日トディは退院した。
抱っこ出来ないので、トラックの荷台に乗せられて。
お姉ちゃんはトディの手を繋いであげた。
トディは毎晩夜泣きをした。
バイオリンを弾いても、ゆりかごをゆすっても泣き止まない。
おむつの交換にはクレーン車が必要だった。
トディはおすわりが上手になると、ボート遊びがお気に入りになった。
もちろん本物のボートで。
初めて歯が生えたので、お姉ちゃんがアイスクリームを食べさせてみると、アイスクリームの販売車ごと食べてしまった。
トディは日に日に成長していき、しゃべったり、歩いたりも出来るようになった。
そして、1歳の誕生日を迎えたのだった。
トディの成長記録は続いていく。
『おおきなわんぱくぼうや』の素敵なところ
- トディの赤ちゃんらしさとかわいさ
- お姉ちゃん目線の成長日記
- 文章と絵のギャップ
この絵本の赤ちゃんはとにかく大きいです。
座れば家の二倍くらいあるし、街路樹だって食べてしまいます。
でも、その成長過程は赤ちゃんそのもの。
無邪気な表情や、その仕草、泣き顔に寝顔、遊んでいる時の楽しそうな顔に、口に食べ物をべったりつけながら美味しそうに笑う顔。
どれもこれもわんぱくでかわいい赤ちゃんそのもの。
大きさ以外は、とってもリアルな赤ちゃんなのです。
その赤ちゃんの成長が、お姉ちゃんの目線で描かれます。
どんな様子か?
どんな遊びが好きか?
座るのが上手になった。
初めて歯が生えた。
親戚に言葉であいさつした時のこと。
歩くようになりクリスマスの飾りつけをしたこと。
などなど、それはまさに赤ちゃんの成長日記。
お姉ちゃんがどんなに赤ちゃんを愛しているか。
家族がどんなに赤ちゃんを愛しているか。
そして、一歳までの道のりがどんなに大変だったか。
本当の子育て日記を見ているかのように描かれます。
しかし、ここで一つ問題が・・・。
文章は普通の子育て日記のようですが、ページの中に描かれる姿はその何倍もスケールが大きいのです。
夜泣きした時は、ゆりかごが大きいので数人がかりでひもを引き揺らす。
その端では大きな哺乳瓶をかかえてミルクの準備。
みんな顔がものすごく眠そうです。
おむつ替えの時は防護服を身にまとい、バキュームのホースを持っています。
お姉ちゃんの言う「あかんぼうって本当に手がかかる」からは考えられないスケールの大変さです。
といったように、普通の成長日記のように書かれた文章と、実際の絵には大きなギャップがあります。
そこが、この絵本をより面白くしてくれているのです。
子どもたちもさらっと語られる文章に、
「アイスの車も食べちゃってるよ!」
「お風呂じゃないし、本当のボートだし!」
とツッコミが止まりません。
それと同時に、
「うちの弟も、おんなじ顔するよ」
「これやってる!もっと小さいけど」
など、身近な赤ちゃんを重ね合わせる子もたくさんいて、トディの中に実際の赤ちゃんを重ね合わせていることも感じました。
「赤ちゃんなのに大きい」、「語り口と実際のスケールの違い」など楽しいギャップが詰ったこの絵本。
でもギャップや発想の楽しさだけでなく、赤ちゃんのかわいさ、成長の嬉しさ、赤ちゃんへの愛もぎっしりと詰め込まれたお話です。
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