文・絵:ジョン・バーニンガム 訳:福本友美子 出版:岩崎書店
夜な夜な出かけていく猫。
ある日、なんとか頼み込んで連れて行ってもらえることに。
そこでの出来事は誰にも教えられない。
だって、秘密だから!
あらすじ
女の子マリー・エレインがあるところに暮らしていました。
家にはマルコムという猫がいました。
マルコムは毎晩外に出かけ、朝になると帰ってきて、昼間はずっと寝ています。
ある日の夕方、おめかししたマルコムを猫の出入り口の側で見つけました。
マリー・エレインがどこに行くのか聞くと、「パーティーへ行くんだよ」とマルコム。
でも、「どこかは秘密だから言えない」と教えてもらえませんでした。
マリー・エレインは「誰にも言わないから連れてって!」と頼み込みました。
しばらく考え込んだマルコムでしたが、了承してくれ、パーティーらしい格好をしてくるように言いました。
支度が整うと、マリー・エレインはマルコムと同じくらい小さくなり、猫の入口から飛び出しました。
それを見ていたのは小さな男の子ノーマン・コワルスキーでした。
ノーマンは2人がパーティに行くのだと聞くと、自分も行きたいと言い出します。
マルコムは「連れてってくれないと誰かに言うよ」と言われたので渋々連れていくことに。
3人でパーティへ向かいます。
しかし、犬の所を通ると、犬たちが追いかけてきました。
3人はマルコムの知っていた犬がついてこられない道を進み、犬たちをまくと、やっとのことで屋根の上の広場に着きました。
ここがパーティ会場です。
いよいよパーティが始まり、たくさんの猫たちが集まってきました。
みんな、マリー・エレインとノーマンにとても親切にしてくれ、踊ったりゲームを楽しみました。
そうこうしていると、突然猫たちが動くのをやめました。
みんな口々に「おでましだ」と言っています。
一体、なにが始まろうとしているのでしょうか。
『ひみつだから!』の素敵なところ
- 現実感と非現実感のあいまいな境界
- ドキドキワクワクのマルコムとの道のり
- 子どもたちと猫だけの秘密だから!
この物語には「猫の世界へ足を踏み入れる」「魔法の力を使う」のような、現実的な世界から非現実的な世界への境界がありません。
自然にマルコムたち猫の世界にいき、自然に元のお母さんがいる現実に帰ってきます。
このさらっと非現実的な世界に誘ってくれるところが、本当に素敵だと思います。
最初は普通の猫のマルコム。
でも、マリー・エレインはおめかしして二足歩行になっているマルコムにも普通に話します。
そして、当たり前のように猫の入口から出られる小ささになってしまう。
もう、その次のページからはマリー・エレインはマルコムと同じ背丈で描かれていくのです。
どこまでが現実で、どこからが猫の世界かわからない不思議な感覚がこの絵本の魅力です。
さて、パーティーに行く道のりも平たんではありません。
なぜなら、猫の天敵である犬の前を通らないといけないからです。
この犬のデザインもおもしろく、レインコートを目深にかぶり、まるで猫のパーティを探る秘密警察のようです。
そこから逃げる姿は静かながらも、スパイ映画さながら。
猫しか通れない道は、まさに綱渡りで、人間の2人は必死についていきます。
子どもたちも「こんな道通れるの!?」「よくついていってるね・・・」と驚きの声。
このドキドキワクワク感がとてもいいスパイスになっています。
もちろん、この冒険やパーティについては秘密です。
特に、お母さんなどの大人には絶対に教えられません。
帰ってきた後の、マリー・エレインとお母さんの会話には、お母さんの知らない秘密を知っているマリー・エレインの得意そうな雰囲気と表情が浮かんでいます。
この3人だけの秘密というのがとても魅力的なのです。
なぜなら、これを見ている子も3人の一員だから。
このやり取りを見ている子どもたちも得意そうに言います。
「そう、教えられないんだよね秘密だから!」
「誰にも言っちゃダメんだ!」と。
当たり前のように不思議な世界に誘ってくれる。
そこでの「秘密の冒険」がとっても楽しい絵本です。
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