作:ふくべあきひろ 絵:かわしまななえ 出版:PHP研究所
悪いことをすると地獄に落ちる。
こう言われてはいるけれど、実際はどんなところなんだろう。
そんなことを思った時には、地獄を少しのぞき見できるこの絵本。
一日だけ地獄体験をしてみましょう。
きっとその恐ろしさがわかるはずです。
あらすじ
悪いことをしたら地獄に落ちる。
本当かどうか一日地獄の鬼になって確かめてみることに。
嘘をつくと・・・
舌抜き地獄。
人の物を盗んだら・・・
綱渡り地獄。
悪いことに対応した色々な地獄を次々と体験していきます。
そして一番最後に待っていたのは人を殺したら・・・
一体どんな地獄が待っているのでしょう。
『いちにちじごく』の素敵なところ
- 地獄の描写が本当に怖い
- 出てくる悪いことの例が子どもにありがちなこと
- ちゃんと人を殺すことについても触れている
この絵本は取り扱っている題材の重さをしっかりと受け止めた絵本になっています。
地獄の恐ろしさをやわらげることなくわかりやすく描かれているのがすごいところです。
絵はデフォルメされ過ぎず、ちゃんと怖さがあります。
その怖さもホラーやおばけ的なものではなく、「実際にこうなったら」という現実的な怖さを描き出しています。
こういう本は意外と多くありません。
でも、トラウマになってしまうほど恐ろしすぎないのもポイントで、絶妙なバランスです。
さらに悪いことの例やその絵が、子どもにありがちなものばかりなので、絵本を見ながら「そういえばあのとき・・・」と自分事として受け止める子も多いでしょう。
だからこそより怖いのです。
そして、子ども向けでありながら、一番重い罪であろう「人を殺す」ということから目を背けずに描いているのも特徴的です。
それまでの地獄と違い、この場面だけはコミカルな描写など一切なくただひたすらに怖い。
感覚的にその罪の重さや絶対にやってはいけないことがわかります。
普段はあまり真正面から向き合うことのないテーマに、しっかりと触れていける考えさせられる絵本です。
『いちにちじごく』のおすすめの読み方
- 真面目に読む
- 子どもの声に耳を傾けていく
- 個人に言及しない
テーマとして途中で茶化したりせずに真面目に読むことがおすすめです。
この絵本を読んでいるとき、自分の罪と心の中で向き合っている子がたくさんいます。
「虫を殺しちゃったな」「妹に意地悪しちゃったな」
などそれぞれに思うところがあるでしょう。
その心の動きこそがこの絵本の大切なところだと思います。
なので、どんな地獄か補足をする程度にして、「これしてる子いない?」など無粋な怖がらせ方はしないことをおすすめします。
自分の中で葛藤する機会は大切です。
その貴重な体験を無駄な言葉で、「ただの怖い」にしてしまわないようにしましょう。
同時に「○○君、この前これやってなかった?」など個人に言及することはやめましょう。
その子はちゃんと自分の心の中で思っているはずです。
その言葉を聞いて他の子が「じゃあ、○○君は地獄に落ちちゃうね」など茶化すことにも繋がります。
追い打ちをかける必要はありません。
日々の自分の行動を振り返るきっかけになる貴重な絵本。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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