著:リチャード・T・モリス 絵:レウィン・ファム 訳:木坂涼 出版:岩崎書店
すべてはここから始まる。
そう、川にクマが落っこちたところから。
きっとこれがなかったら、ずっと一人ぼっちだし、冒険することもなかっただろう。
なぜなら・・・。
あらすじ
昔々あるところに、川が一本流れていました。
ある日クマがやってきて、古い木によじ登りました。
ところが、木が折れて、クマは川に落っこちてしまったのです。
川に浮かぶクマの頭にカエルが飛び乗りました。
カエルはずっと友だちを探していたのです。
クマとカエルは、折れた木の丸太に乗ると川を流れていきました。
少し行くと、川からカメが顔を出しました。
「この先に行くのは危ないよ」と言いつつも、カメも丸太に乗りました。
さらに行くと、元気なビーバーが。
さらにさらに行くと、陽気なアライグマたちが合流しました。
賑やかになった丸太は川をどんどん進みます。
途中でのんびりやのアヒルにぶつかりましたが、そのアヒルも仲間に入れて進みます。
みんなが進んだその先に何が待っているのでしょう。
『かわにくまがおっこちた』の素敵なところ
- 漫画のような躍動感
- どんどん合流する個性的な動物たち
- 川を流れていったあとのお約束
この絵本でまず驚かされるのは、その漫画やアニメを見ているのかと錯覚するほどの躍動感だと思います。
落っこちる時、動物が飛び乗ってくる時、川を流されていく時など。
どれも本当に川の流れや、空気を切る音が聞こえてきそうなほど躍動的なのです。
そんな中で、次々と合流する仲間たち。
この仲間たちが本当に個性的でおもしろいのです。
合流したとたんに、丸太の上の空気感がどんどん変わっていくほどに。
クマやカエル、カメが物静かに丸太でともにゆくのを楽しんでいると思えば、ビーバーの合流で「いいねいいね!すすめー!」と一気にノリよく賑やかに。
そんな風に、どんどん新しい風が吹いてくるのです。
仲間を増やしながら、川を進んでいく動物たちですが、もちろん流れていった先にはお約束が待っています。
子どもたちもそこは薄々感づいています。
「絶対落ちるよ!」
「ほらー!やっぱりー!」
と、予想通りの展開に大盛り上がり!
ここでも、躍動感たっぷりの絵が活きていて、本当に落ちていっているみたい。
そして「ばっしゃーん!」
もう、予想通りですが、その気持ちよさはたまりません。
そりゃ、子どもたちも「ばっしゃーん!」と叫んでしまいます。
でも、この絵本の面白いところは、これが「命の危機」としてではなく、「楽しいスリル」として描かれていることです。
いうなれば、ジェットコースターのようなもの。
だからこそ、落ちた後にみんなで楽しそうに大笑いしているのでしょう。
「助かってよかったー」ではなく、「あー楽しかった」。
そんな爽やかな気持ちが伝わってくるのです。
これはきっと楽しむ仲間がいたからでしょう。
クマが一人だったら、ただの「危機一髪」だったかもしれません。
本来出会うことのない動物たち。
それが一本の川を通して偶然に、奇跡的につながった物語です。
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