たこやはちべえりゅうぐうたび(5歳~)

絵本

文:さねとうあきら 絵:スズキコージ 出版:教育画劇

誰もが知る竜宮城を訪れた浦島太郎の物語。

では、その後に竜宮城を訪れた人がいたのはご存じでしょうか?

このお話は竜宮城を訪れた、欲深い商人の物語です。

あらすじ

昔、九州から大阪へ航海中の船があった。

そこで大きなガラスの壺を自慢しているのがたこやはちべえだった。

はちべえは自慢に夢中になり過ぎて、大事な財布を海にぽちゃん。

はちべえは大急ぎでガラスの壺に潜り込み、その壺に縄を括り付け、海へと沈めさせた。

海のなかでは魚がスイスイ泳いでいる。

そんな中、タコの子どもがはちべえを見て、「あの人形が欲しい」と父にねだった。

それを聞いたはちべえは怒って身を揺らすと、さあ大変、括り付けていた縄がほどけてしまった。

壺は海の底へ沈んでいく・・・。

はちべえが目を覚ますと、そこは竜宮城の前だった。

どうやら門番たちは、はちべえを浦島太郎だと勘違いしている様子。

浦島太郎が帰ってきたと喜んで、はちべえを乙姫様のところへ連れていった。

乙姫様も浦島太郎と勘違いしているようなので、はちべえはなりすまし、玉手箱をもらって帰ろうとした。

帰ったら、その玉手箱を売って金にするつもりだったのだ。

しかし、そこへ本物の浦島太郎が帰ってきてしまった。

ウソがばれたはちべえは竜宮城のみんなから追いかけられることに。

身から出た錆ではあるが、たこやはちべえの運命やいかに。

『たこやはちべえりゅうぐうたび』の素敵なところ

  • 強欲だがどこか憎めないたこやはちべえ
  • 表情豊かで、賑やかで、美しく色づいた海の中
  • 意味が分かると面白いひねりのきいた結末

この絵本の主人公たこやはちべえは金に目がない商人です。

すぐ自慢するし、金は見せびらかすし、人使いは荒く、自分本位の塊です。

その身に降りかかる不幸、全部が身から出た錆で、同情の余地はありません。

挙句は、乙姫様にまで、浦島太郎になりすます始末。

ですが、この振りきった性格や、お金にまっすぐな姿が、なんだか憎めないから不思議なもの。

「もう、まったく・・・」と思いながらも、次の突拍子もない行動に期待してしまうのです。

また、常にポジティブなのもその魅力なのでしょう。

どんなピンチでも、失敗した後もくよくよせず、次の儲け話のために全力を注ぐ姿は見ていて清々しさすら感じます。

そんなはちべえを囲む海の中や、竜宮城には美しい光景が広がっています。

様々な種類の魚やエビ、タコ、ヒトデなど、はちべえを囲む海の生き物たち。

はちべえの姿に驚くもの、悠々と泳ぐものなど表情も様々です。

落ち着いた色合いで描かれる海の中は、幻想的で、楽しく、魅力に溢れています。

見ているだけでも、その世界観に浸り楽しめるでしょう。

さて、美しい世界で繰り広げられる、はちべえの私利私欲の旅にはまさかのオチがついていました。

昔話とは思えない、ひねりのきき過ぎたオチは見る人を選びます。

その意味がわかると「あー!なるほど!」と目を輝かせて、「おもしろ!」と物凄く満足そうな顔をします。

でも、当を得ないと「???」と、はてなが頭に浮かびます。

大多数の子は、補足をしないとこの面白さは伝わらないかもしれません。

しかし、わかるとそれまでの伏線も相まって、中々味わえない知的な面白さを味わうことが出来るでしょう。

オチ以外はスタンダードに楽しく見られる昔話。

オチはひねりが物凄くきいていてわかりにくいけれど、わかればこれ以上ないくらい面白い一風変わった昔話絵本です。

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