作:杉山亮 絵:加藤休ミ 出版:ポプラ社
ちゃんと怖いおばけや妖怪の絵本を読みたい時。
息をのむドキドキを楽しみたい時。
そんな時にはこのシリーズがおすすめです。
まずは『てんぐ』を紹介します。
あらすじ
昔、山のお寺に自分勝手な小僧さんがおりました。
そのお寺にはひもで縛られた天狗の像がありました。
和尚さんは「この像は、昔悪さをしていた天狗を法力で木に変えたものだ。ひもをほどいてはならんぞ」と言っていました。
ある日、和尚さんが用事で村に行くことになりました。
近所の子どもたちと駒回しを始めた小僧さん。
しかし、途中でひもが切れてしまいました。
そこで、天狗の像を縛っていたひもを代わりに使うことに。
・・・するとその夜、手洗いに行った小僧さんの後ろから足音が。
振り返ると天狗が立っていました。
そして小僧さんを掴み、空高く舞い上がったのです。
小僧さんは森の中の天狗堂へと連れていかれてしまいました。
そこにはたくさんのカラス天狗たちもいます。
天狗は小僧さんを天狗にすると言い出します。
すると小僧さんは「駒回し対決で負けたら天狗になる」と返します。
これに乗った天狗と小僧さんの駒回し対決が始まります。
一体勝敗はどうなるのでしょう。
小僧さんは無事にお寺へ帰ることが出来るのでしょうか。
『てんぐ』の素敵なところ
- 天狗の怖さをリアルに描き出している
- 息をつかせぬドキドキの展開
- 迫力のある絵
全編通して悪役として描かれている天狗。
自分勝手だったり、平気でズルをしたりと善意の欠片もない姿が清々しい。
また、小僧さんを天狗にしようと、鼻を伸ばす描写のえげつない怖さも子どもたちのドキドキ感を盛り上げます。
そして、天狗の登場から連れていかれ、駒回し対決をし、天狗にされそうになりと、最後まで息をつかせぬ展開も思わず絵本に見入ってしますポイントです。
食い入るように絵本を見つつ、「ズルい!」「痛そう・・・」など思わず口をついて出る姿は、物語に入り込んでいることを感じさせます。
そこに迫力ある絵が加わることで、臨場感ある物語となっています。
そんな、意外と無いしっかり怖い天狗の絵本です。
『てんぐ』のおすすめの読み方
- 天狗はやくざの大親分のようにすごみをきかせて
- 場面転換に合わせて声トーンを変えていく
- セリフはなりきって読み臨場感を出す
この絵本の主人公を天狗だと言っても過言ではありません。
大げさなくらい悪役らしく、傍若無人に演じていきましょう。
そして、明るい場面、ホラーな場面、ピンチの場面などそれぞれに応じてトーンを変え雰囲気を作っていきましょう。
特にひもを戻すことを忘れ夜になる場面は一気にトーンを落としホラーな雰囲気に。
やりたい放題だった天狗が和尚さんの登場で震えだす場面はトーンとテンポを上げ、希望溢れる雰囲気にしていきます。
その中で大切なのは登場人物になりきってセリフを読んでいくことです。
小僧さんが鼻を伸ばされそうになるところなどは特に必死な様子を出していきましょう。
それによって臨場感も増し、子どもたちもより深くお話に没頭すると思います。
怖くも先が気になってしょうがないこの絵本。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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