作:柴田ケイコ 出版:手紙社
森にあるメガネ屋さん。
店主は猫。
森の動物たちに合わせたどんなメガネも作ります。
今日の依頼はとても大きなメガネ。
誰からの依頼なのでしょう。
あらすじ
めがねこが営む、森のメガネ屋さんは大人気。
色んなお客さんに合ったメガネを作っています。
ある日、お手伝いの3匹のネズミが、ポストに入っていた手紙を持ってきました。
それは森の3丁目のヌシからの手紙でした。
メガネが壊れてしまったので、新しいメガネを作ってくれとのこと。
それは今まで作ったことのない大きなメガネでした。
しかし、めがねこに作れないメガネはありません。
メガネの大きさを決め、丸太を切ってメガネの枠を作ります。
枠に穴をあけ、レンズを入れて磨きます。
一晩かけて、とうとう大きなメガネが出来上がりました。
さあ、めがねことネズミたちは、メガネを持って森の3丁目に向かい出発です。
進んでいくと、池の前にサルがいました。
サルにヌシのことを話すと、池を渡ると近道だと教えてくれました。
最近、木の枝が見えないから、メガネを作ってくれたら連れて行ってくれると言います。
そこで、木登りするサル用の、逆さまになっても外れない、ジャングルメガネを作ってあげました。
サルは大喜びで、めがねこたちを池の向こうまで連れていってくれました。
池を渡って進んでいくと、大きな穴がが見えてきました。
そこにはモグラがいて、ヌシのことを話すと、穴を通れば近道だと言います。
モグラは真っ暗な土の中が楽しくなるメガネを作ってくれたら、連れていってくれると言います。
そこでめがねこは土の中でもキラキラ光る、星空メガネを作ってあげました。
モグラは大喜びで、めがねこたちを穴の向こうまで連れていってくれました。
さらに進んでいくと、見えてきたのは崖でした。
そこにいたのはフクロウです。
さてさて、険しい道が続きますが、めがねこたちはヌシにメガネを届けられるのでしょうか。
『めがねこのぼうけん』の素敵なところ
- メルヘンな世界観の中、一人異質なめがねこ
- 動物たちに合わせた夢の広がるメガネの数々
- 最後に待つ、メガネによるハラハラドキドキの展開
この絵本の世界観や、動物たちの姿はとっても平和でメルヘンです。
小さい子用の絵本に出てくるようなかわいい動物たち。
綺麗なお花だって咲いています。
そんな中、一人だけ悟りを開いたような表情の人物がいます。
そうめがねこです。
その真理を見通しているような眼差し。
深く刻み込まれた皺。
妙にリアルな鼻周り。
明らかに他の動物たちと違います。
そしてどんな注文にも「おやすいごようですよ」とさらっとメガネを作るのです。
もう仙人の域なのではと思うほど。
でも、この異質感と存在感がなんだか癖になるから不思議なもの。
一周回って、この世界観とマッチしているのです。
きっとこのめがねこのキャラクターが、平和でメルヘンな世界の中でよいスパイスになり、冒険をより面白いものにしているのだと思います。
そんなめがねこの作るメガネは、実用性と楽しさを兼ね備えたものばかりです。
サルにはアクロバティックな動きをしても外れないだけでなく、おしゃれなサルに合わせて枠の形をハートにする。
モグラのメガネは楽しさに振り切って、光だけじゃなく星まで飛び出す不思議なメガネ。
といったように、便利なだけじゃなく、心も楽しませようとする、めがねこのこだわりが見えるのです。
夢の広がるメガネの数々に、子どもたちも「こんなメガネ欲しい!」「私は星の形がいいな」など、自分用のメガネを思わず想像してしまいます。
さあ、そんな進む→メガネを作るの繰り返しでしたが、最後の困っている人はなんだか様子が違います。
だって、動物じゃなくオバケなのですから・・・。
そこにはメガネ効果による、ハラハラドキドキの展開が待っていました。
でも、この起伏が物語をより魅力的なものにもしてくれています。
独特過ぎるキャラクターのめがねこによる、夢のあるメガネの数々。
読んだらメガネを作りたくなる、かけたくなる。
そんな森を巡る大冒険の物語です。
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