作:大塚健太 絵:くさかみなこ 出版:小学館
動物園で大人気のパンダ。
しかし、お客さんを取られた動物はあまり面白くありません。
そんな時、パンダが風邪を引いてしまいます。
ピンチの飼育員から、まさかの依頼が・・・。
あらすじ
あるところに、パンダが大人気の動物園がありました。
しかし、パンダ以外の動物は退屈です。
トラのトラたろうもその一人でした。
ある日、トラたろうが退屈で寝転んでいると、慌てた飼育員が走ってきました。
パンダが風邪を引いたから、トラたろうに一日パンダになってくれと言うのです。
飼育員はパンダの着ぐるみを渡して来ました。
トラたろうは渋々着ることに。
しかし、始めてみると、あまりの人の多さにやる気が湧いてきたトラたろう。
タイヤブランコに三輪車、滑り台に木登りと、たくさんサービスをしお客さんも大喜びです。
ところが、木から滑って落ちてしまったトラたろう。
その拍子に、被っていたパンダの頭が取れてしまいました。
あっけにとられるお客さん。
中身がトラだとわかると、がっかりして帰っていってしまいました。
悔し涙を流すトラたろう。
足元にある被り物のパンダの頭を蹴飛ばしました。
すると、その被り物が宙を舞い・・・。
さあ、トラたろうはここからどうやって挽回していくのでしょうか。
『いちにちパンダ』の素敵なところ
- 単純すぎる変装
- 物凄くわかりやすい心理描写
- 最後に待ち構えるまさかのおかわり
トラを相手に「パンダになってくれ」という無茶なお願いから始まるこの絵本。
「せめて、クマにお願いしなよ!」というツッコミをしたくなりますが、頼まれたものは仕方ありません。
無理難題に飼育員が取り出したものはまさかの着ぐるみ。
そりゃトラたろうも子どもたちも「えー!!」と言ってしまいます。
人気の差を前に仕方なく着ていくトラたろう。
「いや、これ絶対ばれるでしょ」と着替えを見守る子どもたち。
その心はシンクロしているようでした。
しかし、お調子者気質のトラたろうはエンジンがかかってしまいます。
やっぱり、たくさんのお客さんに見られるのは嬉しい。
そんな起伏のある心理描写を、見事に表しているのがこの絵です。
特に、肩を落として衣装を着る渋々感や、お客さんに手を振る楽しさが伝わってくる背中など、雰囲気の描き方でその時の心境がとても伝わってくるのです。
トラたろうだけじゃなく、お客さんの空気感も見事に表現されています。
パンダ(中身はトラ)を見て、黄色い歓声をあげる姿。
トラだとわかり、時間が止まったように固まる姿。
その後のがっかり感に、まさかの驚きなど。
表情と色使いでその起伏をくっきり、はっきりと表現していて、そのメリハリが物語の面白さに直結しています。
そして、最後のトラたろうの逆転劇が起こります。
これが痛快で、「よかったね!」「トラたろうすごいね!」と子どもたちもお客さんも大喜び。
めでたしめでたし・・・。
かと思いきや、まさかのおかわりが最後のページに待っていました。
「え!?また!?」
と、子どもたちもあっけにとられて終わります。
最初から最後まで驚かされっぱなしのノンストップな展開に、息をつかせず、目も離せない絵本です。
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