いちにちパンダ(3歳~)

絵本

作:大塚健太 絵:くさかみなこ 出版:小学館

動物園で大人気のパンダ。

しかし、お客さんを取られた動物はあまり面白くありません。

そんな時、パンダが風邪を引いてしまいます。

ピンチの飼育員から、まさかの依頼が・・・。

あらすじ

あるところに、パンダが大人気の動物園がありました。

しかし、パンダ以外の動物は退屈です。

トラのトラたろうもその一人でした。

ある日、トラたろうが退屈で寝転んでいると、慌てた飼育員が走ってきました。

パンダが風邪を引いたから、トラたろうに一日パンダになってくれと言うのです。

飼育員はパンダの着ぐるみを渡して来ました。

トラたろうは渋々着ることに。

しかし、始めてみると、あまりの人の多さにやる気が湧いてきたトラたろう。

タイヤブランコに三輪車、滑り台に木登りと、たくさんサービスをしお客さんも大喜びです。

ところが、木から滑って落ちてしまったトラたろう。

その拍子に、被っていたパンダの頭が取れてしまいました。

あっけにとられるお客さん。

中身がトラだとわかると、がっかりして帰っていってしまいました。

悔し涙を流すトラたろう。

足元にある被り物のパンダの頭を蹴飛ばしました。

すると、その被り物が宙を舞い・・・。

さあ、トラたろうはここからどうやって挽回していくのでしょうか。

『いちにちパンダ』の素敵なところ

  • 単純すぎる変装
  • 物凄くわかりやすい心理描写
  • 最後に待ち構えるまさかのおかわり

トラを相手に「パンダになってくれ」という無茶なお願いから始まるこの絵本。

「せめて、クマにお願いしなよ!」というツッコミをしたくなりますが、頼まれたものは仕方ありません。

無理難題に飼育員が取り出したものはまさかの着ぐるみ。

そりゃトラたろうも子どもたちも「えー!!」と言ってしまいます。

人気の差を前に仕方なく着ていくトラたろう。

「いや、これ絶対ばれるでしょ」と着替えを見守る子どもたち。

その心はシンクロしているようでした。

しかし、お調子者気質のトラたろうはエンジンがかかってしまいます。

やっぱり、たくさんのお客さんに見られるのは嬉しい。

そんな起伏のある心理描写を、見事に表しているのがこの絵です。

特に、肩を落として衣装を着る渋々感や、お客さんに手を振る楽しさが伝わってくる背中など、雰囲気の描き方でその時の心境がとても伝わってくるのです。

トラたろうだけじゃなく、お客さんの空気感も見事に表現されています。

パンダ(中身はトラ)を見て、黄色い歓声をあげる姿。

トラだとわかり、時間が止まったように固まる姿。

その後のがっかり感に、まさかの驚きなど。

表情と色使いでその起伏をくっきり、はっきりと表現していて、そのメリハリが物語の面白さに直結しています。

そして、最後のトラたろうの逆転劇が起こります。

これが痛快で、「よかったね!」「トラたろうすごいね!」と子どもたちもお客さんも大喜び。

めでたしめでたし・・・。

かと思いきや、まさかのおかわりが最後のページに待っていました。

「え!?また!?」

と、子どもたちもあっけにとられて終わります。

最初から最後まで驚かされっぱなしのノンストップな展開に、息をつかせず、目も離せない絵本です。

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