作:エド・ヴィアー 訳:きたむらさとし 出版:BL出版
「○○らしくあるべきだ」そんなことを言われたり、考えたりしたとき。
ぜひ一度立ち止まって読んでみて欲しい絵本です。
「ライオンは獰猛であるべき」という考え方に悩む優しいライオンの姿は、きっとヒントを与えてくれるでしょう。
あらすじ
ライオンは獰猛なもので優しいライオンなんていないという人たちがいる。
でも、レオナルドは別だった。
温かい日差しの中のんびり散歩することが好きだったり、お気に入りの丘で大事なことを考えたり、色んな言葉を思い浮かべ、詩を作ったりしていた。
もし、アヒルがライオンに出会ったらあっという間に食べられてしまう。
でも、それがレオナルドだったらどうなるだろう。
一緒に詩を作ったり、遊んだり、散歩に行ったり。
そんなある日、獰猛なライオンたちがやってきた。
アヒルを食べないレオナルドに「獰猛になれ」と言ってきた。
悩むレオナルドはどんな答えを出すのでしょうか。
『ライオンになるには』の素敵なところ
- 哲学的な内容を子どもにもわかるよう丁寧にかみ砕いた文章
- 例え話を使いわかりやすく話を展開している
- 「自分」ということを考えるきっかけになる
「自分らしいってどういうこと?」という哲学的なテーマをかなり含んでいる絵本です。
それゆえか、文章の構成が独特です。
しかし、それがわかりにくくなるどころか、自然と自分で考えることへ導く作りになっています。
例えば、「ライオンとは獰猛なものだ」という場面では、「獰猛というのは、恐ろしくて、あらっぽくて、乱暴なこと」としっかり説明したうえで「ライオンに捕まったらズタズタ!バリバリ!ムシャムシャ!やられちゃう」とイメージを合わせて伝えています。
これによりレオナルドとの対比がよりわかりやすくなってきます。
また、例え話もうまく活用していて、アヒルと出会う場面では最初にもし獰猛なライオンと出会ったら・・・という例え話をした後で、「そのライオンがレオナルドだったら」と続けることで他のライオンと違うということをわかりやすく伝えています。
そして、そんなレオナルドの姿を見ているうちに、普段当たり前の「自分」というものに視線を向けるきっかけを与えてくれます。
当たり前を当たり前ではなくしてくれる絵本です。
『ライオンになるには』のおすすめの読み方
- ゆっくりめのペースで子どもの頭に入りやすいように
- 読み終わった後に「自分」はどんな自分かを話してみても面白い
この絵本の独特の文章構成は、あまり抑揚をつけすぎず、ゆっくりと頭に言葉が入ってきやすいペースで読んでいくといいと思います。
ゆっくりめのペースにすることで子どもが自分で考える時間も生まれます。
絵本の最後に子どもに語り掛けるセリフがあるので、そこから「自分」というものについて子どもと話すのも面白いと思います。
そこから発展して、他の子からの「自分像」を聞いてみてもいいと思います。
自分で考えている「自分」と違っていたりして結構盛り上がりますよ。
そんな「自分」というものを考える、普段はあまりない視点を与えてくれるこの絵本。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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