文:ベネディクト・カルボネリ 絵:ミカエル・ドゥリュリュー 訳:ほむらひろし
出版:クレヨンハウス
普段は子ブタも子ヤギもぺろりと食べてしまうオオカミ。
そんなオオカミに狩りをしたり食べることよりも夢中になれることがあったら一体どうなるでしょう。
一冊の絵本に魅了され、そのことで頭が一杯なオオカミのお話です。
あらすじ
ある日オオカミが昼寝をしていると、それを邪魔する声がします。
行ってみると親子がベンチに座って絵本を読んでいました。
そーっと近づいて見てみると、その絵本のなんとおもしろいことか。
お話の続きが知りたくて、食べるのを我慢するほど。
しばらくすると、絵本の途中で親子は帰ってしまいます。
続きを知りたいオオカミが親子の後姿を見つめていると絵本が落ちました。
「しめた!」っと誰にも邪魔されない場所まで絵本をくわえて行き、いざ絵本を開きます。
・・・しかし、オオカミは字が読めなかったのです。
何が書いてあるか全くわかりませんでした。
そこで近くにいたフクロウに読んで欲しいと頼みます。
でも、「だまして食べようとしているんでしょう」と読んではくれませんでした。
他の動物たちにも頼みに行きますが、オオカミの姿を見るとみんな逃げてしまいます。
そんな中、「読み方を知らないの?」とウサギが話しかけてきました。
オオカミが正直に打ち明けると、食べないと約束してくれるなら読んであげるというウサギ。
オオカミは約束しました。
ウサギが読み始めるとお話に夢中です。
読み終わると「もういっかい!」。
何度も何度も読んでもらっているうちに、ある日オオカミが言いました。
「読み方を教えてくれないか?」
ウサギは悩みます。
オオカミが自分で読めるようになってしまったら、自分は用済み。
食べられてしまうのではないか・・・。
一体ウサギはどうするのでしょう。
そしてオオカミの反応は・・・。
『このほんよんでくれ』の素敵なところ
- 子どものようなオオカミの純粋な姿
- 夢中になったことへの必死さや情熱が詰まっている
- デフォルメしすぎない描き方
この絵本の一番の魅力はなんといってもオオカミの姿でしょう。
落ちた絵本を拾いウキウキ走っていく時の嬉しそうな表情。
字が読めなかった時の悔しそうな顔。
絵本を読んでもらっているときの穏やかな様子。
ウサギがもう一回読んでくれると言った時、飛び跳ねて喜ぶ仕草。
素直なセリフと相まって、オオカミの気持ちが手に取るように伝わってきます。
まるで面白そうな絵本を見つけた子どものように。
すごくかわいいのですが、デフォルメや擬人化などせずに描かれているのも素敵なところ。
絵本を運ぶ時には口にくわえ、ページをめくる時も鼻先でめくる。
飛び跳ねる時や、寝そべる時も本当の犬やオオカミに忠実な描き方。
これにより、オオカミらしさを失わず、お話にリアリティがあるのです。
このオオカミは優しいオオカミでは無いのです。
普段はペロリと食べてしまうようなオオカミです。
それが、夢中になれるものが見つかり変わってく様子は気持ちよくも、じーんときます。
生き生きとした子どものようなオオカミの姿をぜひ見てみてください。
『このほんよんでくれ』のおすすめの読み方
- オオカミをオオカミらしく読む
この絵本に関しては一つだけです。
オオカミのセリフをオオカミらしく読みましょう。
おすすめは『三匹の子ブタ』や『オオカミと七ひきの子ヤギ』のような、しわがれ声のオオカミです。
「オオカミがいつか牙を剥くのではないか」というウサギの不安がなければこの絵本は成り立ちませんし、最後のシーンへ繋がりません。
ですので、喜ぶ時もはしゃぐ時も、野生のオオカミらしさを維持しつつ読んでいきましょう。
絵本っていいなぁと改めて思えるこのお話。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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