作:とみながまい 絵:たかおゆうこ 出版:ひさかたチャイルド
穴の開いたズボンや服をどうしているでしょうか。
繕ったり、ワッペンをつけたりと工夫をして使ったり、捨ててしまったり。
この絵本を見ていると、使い古した服たちとの思い出が頭に浮かび、
大切にしよう、リサイクルしようという気持ちになってきます。
あらすじ
地蜘蛛のジグモンタは穴ふさぎ屋をしています。
生地にぴったりと合う糸を作って、穴の開いた衣服を元通りに直します。
ある日、ヒキガエルが依頼していたコートを取りに来ました。
しかし、新しいコートを着ています。
そして「流行遅れだしな。捨ててしまってもかまわなかったのだがね」と言いました。
今度はハリネズミの姉妹が新婦のベールを持ってやってきました。
姉妹全員結婚するときはこのベールをしていて、末の妹の結婚式用に穴をふさいでくれと言います。
でも、夕方になって末の妹が駆け込んできて、おふるは嫌だと泣き出し、新品を仕立てることにして帰っていきました。
自分が穴をふさいでも、それを使う人はいないと悩んだジグモンタ。
店を閉め出ていきました。
しばらく行くと、大きなくしゃみの音が聞こえてきます。
そこにはフクロウの親子が。
子どもたちが毛布をつついて穴をあけてしまい困っているといいます。
そこでジグモンタは穴ふさぎを引き受けます。
寒くなる夜になるまでに間に合わせなければいけません。
大急ぎで直したので、絡まった糸にフクロウの羽が織り込まれてしまいましたがなんとか間に合いました。
疲れたジグモンタは三日三晩眠り続けました。
その間に、フクロウの三匹の子どもたちは巣立っていきました。
ジグモンタが目覚めました。
フクロウのお母さんに「穴の跡がわからないようにやり直したい」と申し出ると、
「もったいない。この穴の跡を見るたび、いたずらっ子たちを思い出して楽しくなる」と笑いました。
外に出たジグモンタは花や草を集め始めます。
そして、直したベールをハリネズミの所へ持っていきました。
ジグモンタはフクロウの毛布の穴ふさぎからどんなヒントをつかんだのでしょう。
果たして、直したベールをハリネズミの妹は喜んでくれるのでしょうか。
『あなふさぎのジグモンタ』の素敵なところ
- 綺麗な色使いに見ているだけで楽しくなる
- ジグモンタの様々な思いが繊細に描かれている
- 「古い」ものに詰まった「思い出」を感じ、それを次の人も気持ちよく使える工夫
表紙を見ただけでわかるのが、この本の色使いの綺麗さです。
ジグモンタが作っている糸のなんと綺麗なことでしょう。
ついついずっと見ていたくなります。
まるで、綺麗な宝石を眺めるような感覚です。
それは本編に入っても同じです。
直したコートや森の景色など、どれも色鮮やかで綺麗で、思わず見入ってしまいます。
そして、ジグモンタの心の動きもわかりやすく繊細に描かれています。
誇りをもって楽しそうに仕事をするジグモンタ。
仕事終わりのお茶は欠かせません。
でも、穴をふさいでも誰も使ってくれなくなり悩みます。
ベッドの中で眠れずに。
しかし、フクロウの毛布からヒントを得ると嬉しそうに材料集め。
それが本当に楽しくて嬉しそう。
この仕事が好きなのが伝わってきます。
そんなジグモンタの姿勢から伝わってくるのは、
「古いものは大切」というだけでなく、
「それを次の人に気持ちよく使ってもらうことも大切」ということ。
「お古は嫌だなー」と思っていても、そこにお気に入りのキャラクターのワッペンをつけてもらったら、一番大切な服になった。
昔着ていて小さくなった服を、繋ぎ合わせて新しく作り直してもらったら、思い出のいっぱい詰まった服になったなど、経験している人も多いのではないでしょうか。
そんな大切なことがたくさん詰まった暖かく綺麗な絵本です。
『あなふさぎのジグモンタ』のおすすめの読み方
- ベールを開くところは大々的に、開いた後はゆっくり見せる
- 最後のページは長めに見せ、想像力をかきたてる
- 読み終わった後、地蜘蛛の説明をしてあげる
直したベールを開くところは、この絵本の一番盛り上がるポイントです。
どうなるのかドキドキしている子どもたちから「わ~!きれい~」など感嘆の声が上がります。
本当にベールを開くようにページをめくりましょう。
そして、ベールの飾りが細かく描かれているので、じっくりと見る時間を作りましょう。
最後のページには字がなく、お店に戻ったジグモンタが描かれています。
お店やお客さんがどうなったかなど、色々な想像が出来るので、絵本の後の話を想像したりと余韻に浸りながら想像の世界を楽しむのがおすすめです。
また、最後のページの後にこっそり「ジグモって知ってる?」というコラムがあります。
地蜘蛛の生態を知ると、よりジグモンタに興味が湧いたり、なぜ穴ふさぎと地蜘蛛をかけたのかなどもわかります。
2回目を見るのがより楽しみになるのではないでしょうか。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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