作:加藤休ミ 出版:風濤社
空に浮かぶふんわりとした雲。
動物の形に見えることもあれば、食べ物の形に見えることもあります。
のんびり自由な雲とふんわり遊べたら・・・。
そんな願いを叶えてくれるのは一つのボールでした。
あらすじ
ある日、ぼくはやっと抱えられるくらいの、大きくて赤いボールを見つけた。
お母さんは大きすぎるから持っていけないと言ったが、なんとか頼み込んで許してもらった。
ぼくはボールを抱え、お母さんの自転車の後ろに乗った。
自転車が坂道を降りていくと、風の勢いでボールが浮き始めた。
そのままぼくも浮かんで空へ飛んでいく。
お母さんは気付いていない。
ボールとぼくは雲の上まで来た。
すると、雲が喜んで近づいてきた。
ウサギの形の雲に、ボールが赤い目になって、ボールととぼくと雲はウサギになった。
その後も、色々なものになっていく。
イチゴのケーキ、けん玉、サルのお尻。
野球の球になった時、野球の球を見つけたバットの雲が、カキーンと打った。
ホームランかと思いきや、グローブの形の雲がナイスキャッチ。
野球の球ををグローブの中に収めることに成功した。
そのままグローブの雲と合体し、ボールとぼくと雲はおにぎりになった。
今度はおにぎりを食べようと、大ザルの雲が手を伸ばしてくる。
おにぎりの雲はつかまらないよう、ふわりと逃げた。
大ザルもふわりふわりと追ってくる。
逃げているボールとぼくと雲のところに、雲が集まってきて「信号機になろうよ」と言った。
赤信号になると、大ザルはきちんと止まったので、そのうちに逃げ切った。
ボールとぼくと雲の遊びはまだまだ続く。
次は一体何に変身するのでしょう。
お母さんのところにはどうやって戻るのでしょうか。
『ぼーるとぼくとくも』の素敵なところ
- のんびりふんわりとした雲みたいな空気感
- 雲ならではの変幻自在な物語
- 読んだら自分だけの雲の物語を作りたくなる
この絵本はまるで、晴れた日の空に浮かぶ雲のよう。
見ているだけで、のんびりと寝転びたくなるような。
ずっと見ていられるような、ゆーっくり時間が流れていくような空気感。
そんなのんびりと平和な空気が、絵本全体に流れているのです。
展開としては、急に空に浮かんだり、大ザルに追いかけられたりとドキドキ感があってもおかしくないのですが、文章ののんびり感からなのか、ふんわりしています。
そして、その物語も雲ならではの変幻自在で自由なものになっています。
野球の球になって、バットが打って、グローブがつかまえて、合体しておにぎりになる。
おにぎりを食べようと、大ザルが追いかけてきて、信号機になって動きを止める。
などなど、形が自由に変わっていく雲だからこその自由な物語。
これがこの絵本の一番の魅力だと思います。
この絵本を読むと、雲の形を探すだけではなく、そこから物語を作りたくなるのです。
読んでからすぐ、窓に集まって「あの雲は○○の形に見える!」と言うだけでなく、
「飛んで行ってあっちの雲にぶつかっちゃうよ」
「じゃあ、あっちの雲はクジラみたいだから食べちゃうよ」
というように、子どもたちの『ぼーるとぼくとくも』が始まるのです。
ふんわりとしたのんびり優しい雰囲気の中で、自由な物語を作るきっかけをくれる絵本です。
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