ほしじいたけほしばあたけ~いざ、せんにんやまへ~(4歳~)

絵本

作:石川基子 出版:講談社

いつもカラカラに乾いた椎茸のおじいちゃんとおばあちゃん。

しかし、シワシワの見た目とは裏腹にすごいパワーを秘めています。

そんな二人がキノコ助けの冒険に出かけます。

あらすじ

ある森の中にある、きのこ村の外れ、ほだぎの里にほしじいたけとほしばあたけが暮らしていました。

好きなことは日向ぼっこで、嫌いなことは水に濡れることです。

ある日、村の子どもに呼ばれたので行ってみると・・・。

そこにはぐったりと横たわるキノコの子どもたちが。

見てみると「かさよれよれ病」ではありませんか。

「かさよれよれ病」は子どもがかかると、大人になっても傘が開かなくなる危険な病気です。

助かるためにはきのこ仙人の薬が必要でした。

しかし、きのこ仙人の住む仙人山はたいそう遠くにあるのです。

ですが、迷っている暇はありません。

ほしじいたけとほしばあたけは仙人山へと出発するのでした。

険しい道を進み、どうにかきのこ仙人のところへたどり着いた二人。

きのこ仙人の正体は冬虫夏草。

お風呂に浸かりながら、二人を出迎えました。

ところが、きのこ仙人は話も半ばで寝てしまったではありませんか。

それもそのはず、きのこ仙人が浸かっていたのはお酒の風呂だったのです。

その時現れたのが、きのこ仙人の一番弟子ヤマブシタケでした。

ほしじいたけとほしばあたけから、病気の話を聞くと、早速薬を作ってくれることに。

ただ、そのためには頑固者サルノコシカケの力を借りなければなりません。

サルノコシカケにお願いしますが、案の定断られてしまいました。

頼み込むとサルノコシカケは、難しい早口言葉を3回言えたら手伝ってくれると言います。

しかし、普段ゆっくりしゃべるほしじいたけには難しい様子。

どうしても言えないほしじいたけは、意を決して水たまりに横たわりました。

すると、カラカラだった体はみるみるぷっくりと潤って、若者のようになったではありませんか。

若者になったほしじいたけは、早口言葉を超高速で3回言い切ったのです。

これにはサルノコシカケも、薬作りを手伝うしかありません。

薬の元になる木の皮や根っこを粉々に砕いてくれました。

他の弟子たちも手伝ってくれ、やっと目を覚ましたきのこ仙人が仕上げに呪文を唱えます。

そして、ついに薬が完成しました。

あとは、薬を届けるだけ・・・。

なのですが、ほしじいたけがぐったりとしています。

そう、若返ったほしじいたけは長持ちしないのです。

その姿を見て、今度はほしばあたけが意を決しました。

果たして、二人は薬を無事に届けられるのでしょうか。

『ほしじいたけほしばあたけ~いざ、せんにんやまへ~』の素敵なところ

  • 乾物、きのこネタが満載
  • ヒーローばりの変身パワー
  • ダイナミックで大迫力の絵

この絵本の素敵なところは、溢れんばかりのきのこ愛と乾物愛だと思います。

干し椎茸をおじいちゃんとおばあちゃんに見立てる発想。

ヤマブシタケや冬虫夏草、サルノコシカケなどマニアックで魅力的なキノコチョイス。

ほしじいたけとほしばあたけの好きなことが日向ぼっこや、濡れるとぷっくり若返る。

でも、若返ると日持ちしない。

など、細かい所まで、乾物とキノコの特徴を活かしきって描かれているのです。

その特徴を知っていると、思わずニヤリとしてしまうこと間違いなし。

少し前に食育で干し椎茸を作っていた子どもたちは大盛り上がり。

「ほしじいたけも、水に浸かって戻った!」

「あ、また乾いた!」など、本物とリンクさせているようでした。

しかし、この絵本の魅力は、乾物力とキノコ力だけではありません。

それが、ヒーローも顔負けのほしじいたけとほしばあたけの変身パワーです。

水に浸かるとあら不思議、肌はぷっくりつやつやになり若返ります。

そのパワーは変身前とは比べ物になりません。

その姿はまさに変身ヒーローそのものです。

子どもの反応もまるでヒーローショーのよう。

「若返った!?」

「ほしじいたけすごい!」

「ほしばあたけがんばれー!」

と黄色い声援が飛びかいます。

長持ちしないという弱点もありますが、そのピンチもヒーローものように盛り上がるポイントなのです。

ですが、その盛り上がりにはもう一つ大切な要素があります。

それが、ダイナミックで大迫力の絵です。

忍者のように登場するヤマブシタケ。

意地悪な顔で悪者のように立ちはだかるサルノコシカケ。

そして、変身後の必殺技のように早口言葉を言い放つほしじいたけ。

さらに、ハリーポッターばりの呪文を見せつけるきのこ仙人。

と言ったように、もうその絵だけで物語が進められるほど、迫力満点でダイナミックに描かれていくのです。

これが変身ヒーローな雰囲気と相まって、子どもたちを盛り上げているのだと思います。

おじいちゃん、おばあちゃんの話とは思えないほどの盛り上がりを見せつつも、細かい乾物・きのこ設定を忘れないきのこ大好き絵本です。

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