著者:菅野仁 出版:筑摩書房
「みんな仲良く」そんな幻想を打ち破る本書。
その中で特に心に残った部分を紹介させていただきます。
友だち100人出来るかな
このフレーズはほとんどの人が聞いたことがあるのではないでしょうか。
「クラスはみんな仲良し」「友だちをたくさん作ろうね」というメッセージが込められています。
しかし、みんな仲良くできるものでしょうか。
僕は今でも保育園時代に絶対に仲良くなれなかった相手がクラスにいたのを覚えています。
また、学年が進んでも、社会人になっても好きになれない人はいました。
今、「みんな仲良く」「話せばわかる」という当たり前のメッセージによる呪縛に悩んでいる子が多くいるようです。
それはそうですよね。
大人の世界では「みんな仲良く」なんてありえないし、「話してもわからない」ことはたくさんあるのですから、矛盾しています。
一人で生きていける現代
昔の村社会では、みんな仲良く支え合わないと生活していけませんでした。
しかし、貨幣経済となり、極端に言えばお金さえあれば一人でも生きていける社会になりました。
そうなってくると、昔のような繋がり方には綻びが生じてきます。
なので村社会的な「みんな仲良く」で育った結果、現実とのギャップに悩むということになってしまっています。
では、どうしていけばよいのでしょう。
並存すること
それは並存することです。
気の合わない相手とは距離を置いてやり過ごす。
でも、無視するわけではありません。
最低限のあいさつはするし、必要な時は協働します。
お互い傷つけあわないよう距離を取り、必要なルールはお互いに守りやり過ごすのです。
その作法を教えることが今の教育には必要なのではないか。
そして、もう一つ教えるべきことがあります。
君たちには無限の可能性もあるが、限界もある
もちろん無限の可能性がありますが、誰もがカール・ルイスになれるわけではありません。
努力することはいいことです。
それは純粋に褒めて伸ばしてあげていいと思います。
でも、同時に上には上がいることや、努力だけではどうにもならないことがあることも伝えていく必要があります。
それを知ることは苦い経験だと思います。
でも、その苦みを知った上で、自分はどんなスタンスで行くのかなどを考えていくことが大切なんだと思います。
教育現場では競争を減らし、子どもを傷つけないようにする傾向が強くなっていっています。
ですが、社会は競争が激化している「評価社会」です。
今、そのギャップは大きく広がっています。
社会人になることを見据えた教育や関わり方が必要とされているのではないでしょうか。
友だち幻想
現代「傷つきやすい私」が増えているそうです。
それは高校生くらいまでフィーリング重視の「気が合う友だち」集団にいることが多いからだと考えられます。
同質性の中で生活していることで、異質な他者を受け入れる準備が出来ていない。
異質な相手と信頼関係を結んでいけない結果傷つきやすくなってしまう。
「100%自分のことをわかってくれる友達」というのは幻想です。
気が合う相手でも他者です。
自分とは違う相手なんだから、考え方も違う。
100%なんてわかってくれるはずがない。
という視点を持ちながら、違う部分も含めて付き合っていくことが必要です。
コミュニケーション阻害語
さて、そうした関係を作っていく中で、コミュニケーションや相手への理解を阻害する言葉があるといいます。
- 「ムカツク」と「うざい」
- 「ていうか」
- 「チョー」「カワイイ」「ヤバイ」
- キャラがかぶる、KY
特に他者の異質性を認めることを阻害する言葉は「ムカツク」と「うざい」です。
「嫌い」という時は理由が一緒に述べられます。
「○○だから嫌い」と。
しかし、これらは理由すら必要とせず、異質性や苦みを感じた瞬間にシャットアウトしてしまい、さらには攻撃にも使えます。
少しでも異質性を感じた時にこれらの言葉で拒否していては、異質性を自分の中に馴染ませることは出来ません。
おわりに
日頃、当たり前のように思っていること、使っている言葉を振り返るきっかけになる本でした。
大人の目線から見た時、この瞬間も大切ですが、社会人になっていくことを見通し、この関わり方が本当に為になるのだろうかということを考えていく必要があるように思います。
本文には理論の裏付けや、体験談などもっともっと深い内容が盛りだくさんなので、興味を持たれた方は是非読んでみてください。
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