文:あいはらひろゆき 絵:あだちなみ 出版:教育画劇
サンタさんは子どもだけに来ると思っていませんか?
いいえ、サンタさんは大人のことも見ています。
頑張る大人へ、手を握ってもらった時のように、心が温まる絵本です。
あらすじ
クリスマスがやってきました。
でも、女の人は今日も働いていました。
女の人の仕事はケーキを売る仕事。
今日は一年で一番忙しい日なのです。
なんとかケーキも売り切れ、急いで家へ帰ります。
しかし、ちょうど最後のバスが行ってしまった所でした。
女の人はがっかりしてベンチに座り込んでしまいました。
空からは雪が降ってきます。
その時、ふいに鈴の音が聞こえてきました。
女の人が振り向くと、そこにはトナカイとソリが。
ソリにはサンタさんが座っていて、女の人を乗せてくれると言うのです。
ソリは静かに走り出し、女の人を家に送り届けてくれました。
家に着くと、女の子が玄関で眠っていました。
女の人は女の子を抱きしめました。
二人は小さなクリスマスケーキに火を灯し、一緒に火を消しました。
クリスマスを祝う二人。
でも、女の人にもう一つ素敵なクリスマスプレゼントがあったのです。
『クリスマスプレゼント2~ほし~』の素敵なところ
- 頑張る大人へのクリスマスプレゼント
- 登場人物たちの自然な優しさが温かく流れ込んでくる
- 絵本の世界に入り込ませてくれる絵や構図
子どもへサンタさんが来て、プレゼントをくれる話はたくさんあります。
大人へもプレゼントをくれる昔話もあったりします。
でも、現代の働く大人を題材にした絵本は少ないように思います。
頑張る自分と重なる女の人への、クリスマスのプレゼント。
それがこの絵本の素敵なところだと思います。
また、大人だけでなく子どもが見ても、自分のお母さんやお父さんの姿が思い起こされるかもしれません。
現実的過ぎず、幻想的過ぎず、大人も子どもも温かな気持ちにしてくれるのです。
この絵本の温かさは、女の人、女の子、サンタさんの優しさがみなとても自然だからなのだと思います。
仰々しさも、派手な演出もありません。
そこにあるのはまるで、「目の前で落とし物をした人がいたから、拾って渡した」
そんな自然な優しさや会話ばかりなのです。
だからこそ見ていて自然に心にしみわたり、大人も子どもも同じくらい優しく温かな気持ちにしてくれるのでしょう。
話の流れや文章だけでなく、絵や構図も特徴的です。
客観的な視点の中に、時折、主観的な視点が入ってくるのです。
雪が降ってきた場面では、女の人が空を見上げる視点。
クリスマスケーキに火をつける場面では、ケーキを囲んでいる姿ではなく、ケーキだけを描く。
女の子からの温かなプレゼントを受け取った時は、女の人が感じている温かさを色合いで表現する。
というように、ところどころで女の人の気持ちを感じる仕掛けがしてあるのです。
これにより、さらに絵本の世界に入り込みやすくなっています。
絵本が大好きな子どもだけでなく、頑張る大人の人にも読んでみて欲しい。
とてもとても優しく心温まるクリスマスの絵本です。
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