もくべえのうなぎのぼり(5歳~)

絵本

文:さねとうあきら 画:いのうえようすけ 出版:教育画劇

ツルツル、ヌルヌル滑って掴みどころがないウナギ。

掴んでは滑って、掴んでは滑って・・・。

追いかけ続けていると、いつの間にか空まで追いかけ、気付けば天の上まで来てしまったのでした。

あらすじ

ある男、もくべえが、かば焼きを作るつもりでウナギを掴んだら、にゅるにゅる逃げ出した。

ウナギを手繰っていくと、玄関を出て、ついには屋根の上まで。

さらにウナギは空に昇り、もくべえを連れたまま、天を目指して進みだした。

ウナギとともに黒雲に突っ込んだもくべえは、稲光に目がくらみ、真っ逆さまに落ちてしまった。

気がついたら、見知らぬお社の前に倒れていた。

もくべえは通りがかりの親切な人に助け起こされ、ここが天の川神社だということを教えてもらった。

しかも、もくべえのいた大阪ではなく、天の上だと言う。

親切な人に「せっかくだから見物して戻ったらいい」と言われ、のんきなもくべえはそうすることにした。

あたりを見回すと、星たちがせわしなく働いている。

親切な人に聞いてみると、年に一度の天の川祭りがあるから、あちこちの星が手伝いに来ているのだと言う。

もくべえが親切な人に、「あなたはどこの星か?」と尋ねると、なんと「雷のごろぞう」だと答えた。

雷は普段は人間の姿をしているが、神輿を担ぐ時には本当の姿に戻ると言う。

ごろぞうはもくべえに「せっかくなら、雷の格好をして見物しないか」と提案した。

応じたもくべえは、ごろぞうの家で準備をすることに。

ごろぞうの家に行く途中、神社の裏手にしめ縄を張った古い井戸があった。

井戸のことをごろぞうに訪ねてみると、「昔、仙人が落ちた井戸」なので近づかない方がいいそうだ。

しかも、大ナマズやドジョウもいるという。

もくべえが「ウナギもいるか?」と尋ねると、「食いつきそうなウナギがいる」と言われ、もくべえは気味悪がって井戸を避けて通った。

もくべえはごろぞうの家で雷の格好にしてもらうと、神輿を見物しにいった。

そこではたくさんの雷がたくさんの神輿を担いでいた。

神輿がぶつかり合うたび、稲光が走り、あたり一面明るくなった。

その光を見てもくべえはウナギに掴まって見た稲光を思い出し、「これはウナギにはかられているのではないか?」と疑い始めた。

そう考えると、あの井戸が怪しい。

あの井戸にウナギは逃げ込んでいるのではないか?

もくべえが井戸を覗いてみると、中かかなにやら光がさしている。

金銀財宝かと思った時、もくべえは井戸に落っこちてしまった。

仙人でも落ちて帰ってこれなかった井戸。

もくべえはどうなってしまうのでしょう。

『もくべえのうなぎのぼり』の素敵なところ

  • 掴み損ね続け、空まで登ってしまうという発想
  • 不思議なことがたくさんの天の上
  • どこまでが現実で、どこからが夢の世界か曖昧な不思議さ

ウナギやドジョウを掴み損ねて、「おっとっと」と宙を掴もうとする姿は目に浮かびます。

しかし、それを追いかけ続けた、まさか空まで追いかけていってしまうとは誰も思いません。

そんなまさかが起こるのがこの絵本。

玄関を出て、屋根に登ると「こんなとこまで来ちゃった」と驚く子どもたち。

でも、驚くのはまだ早い。

そこからまさかの空へ昇っていき、焦るもくべえ。

焦る子どもたち。

「手を離さないと!」

「帰れなくなっちゃう!」と必死で訴えますが、無情にも黒雲に突っ込んでしまうのでした。

そんなこんなでたどり着いた天の上。

そこでは星たちが働いていたり、雷が人間の姿をしていたり、お祭りがあったりと不思議なことが盛りだくさんです。

天の上のことをごろぞうが教えてくれるたび。

「そうなんだ~」と素直に聞く子どもたち。

それらの不思議の極めつけが、神輿と神輿のぶつかり合い。

その迫力は凄まじく、本当に目の前で稲光が舞い散っているようです。

だけれど、このお話の一番不思議なのはウナギの天昇りでも、天の上の話でもありませんでした。

それが明かされるのが最後の場面。

そう、まかのどんでん返しがあったのです。

そのどんでん返しも、よく考えると不思議なところが盛り沢山。

それを見てから読み直すと、「ここは夢だったのかな?」「全部本当だったんじゃない?」と様々な意見が出ます。

現実の世界と、夢の世界の境界がどれだけ考えてもはっきりとしないのです。

一風変わった旅行記かと思きや、読んだ後に現実と夢の境が曖昧になる。

なんだか不思議な感覚にさせてくれる昔話絵本です。

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