詩:クレメント・クラーク・ムーア 絵:アンジェラ・バレット 訳:石井睦美 出版:BL出版
クリスマス・イヴの夜。
みんなが寝静まったころ、あの人がやってくる。
サンタさんをワクワクして待ちきれない。
そんな子どもにぴったりの絵本です。
あらすじ
クリスマス・イヴです。
家じゅうが静まり返り、子どもたちは夢の中。
お父さんとお母さんも寝ています。
その時、外からカタカタと音が聞こえ、跳び起きたのはお父さん。
外の様子を見に行くと、一面の雪の中を駆けてくるトナカイとソリが見えました。
もちろんソリにはサンタクロース。
サンタクロースがトナカイたちの名前を呼びあげると、トナカイたちは屋根の上へと駆け上がります。
サンタクロースは煙突を通り、家の中へ。
そのかわいらしく、愉快な精霊のおじさんに、お父さんは思わず笑ってしまいます。
そんなお父さんへサンタクロースが返したウィンクは「ひみつだよ」と言っているよう。
サンタクロースはおしゃべりもせず、吊るしてある靴下をプレゼントでいっぱいにしていきます。
そして、屋根の上に戻るとサンタクロースはソリに飛び乗り、空高く飛び立っていきました。
でも、一行が消えていくその時に、お父さんはサンタクロースの声を聞いたのです。
「クリスマス、おめでとう、みなさん。どうぞよい夢を」
『しずかなしずかなクリスマス・イヴのひみつ』の素敵なところ
- とてもシンプルで夢の詰まったクリスマスの夜
- 本当に起こると思わせてくれる、写実的で美しい絵
- お父さんとサンタクロースの静かな静かなやり取り
この絵本の一番素敵なところはストレートに、シンプルに、夢いっぱいに、クリスマスの夜を描き出してくれていることだと思います。
みんなが寝静まったころ、サンタクロースが来て、プレゼントを置いて、去っていく。
もちろん、トナカイにソリを引かせ、煙突を通り、プレゼントは靴下の中へ。
そんなサンタクロースのお約束を余すところなく、余分なところもなく、忠実に描いてくれているのです。
これを見たら、子どもたちはもうワクワクが止まらなくなってしまいます。
だって、その日の夜、自分に起こることなんですから。
その現実感をさらに増してくれるのが、とても写実的で美しい絵です。
トナカイの毛並み、雪の質感、子どもたちの寝顔、静まり返った家の中。
もちろん、サンタクロースの表情や衣服の一つ一つまで、丁寧に美しく描き込まれています。
本当に実在するかと思うほどに。
だからこそ、見ている人の期待感を否が応でも高めてくれるのです。
ワクワクさせてくれるのです。
夢のような出来事ですが、それを現実とつなぎ合わせてくれるのがお父さん。
サンタクロースとお父さんの静かな静かなやり取りを見て、それが本当に起こっていることだと再確認します。
そして、もしかしたら自分のお父さんもサンタクロースに会ったことがあるかもしれない・・・と。
しかし、会ったことがあったとしても、それは教えられないのです。
なぜなら「秘密」だから。
クリスマス・イヴの夜をシンプルに美しく描き出す。
サンタクロースがいることを信じたくなる、会いたくなるクリスマス絵本です。
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