作・絵:鈴木まもる 出版:徳間書店
たくさんの本が並ぶ図書館。
そこで子どもたちが出会ったのはとてつもなく大きな本。
開いてみると、絵本の世界に入り込んでしまいました。
あらすじ
男の子は図書館が大好き。
毎週、日曜日に弟、妹と図書館に来ていました。
弟と妹がトイレに行くと言うので男の子もついていくと、曲がり角の物陰に高さが天井まで届くほど大きな本が立てかけてありました。
タイトルは「きょうりゅうもどうぶつだ」。
3人が表紙を開いてみると・・・。
そこでは本当に恐竜が暮らしていました。
大きさを比べるため、シマウマやゾウなどの動物もいます。
3人はもっと近くで見ようと、絵本の中に入り込んでいきました。
パラサウロロフスやアンキロサウルスブラキオサウルスなどたくさんの動物の生態や、現代の動物と似ているところなどが描かれていきます。
どんどん進んでいくと、ティラノサウルスの巣に着きました。
そこでは赤ちゃんと一緒にティラノサウルスが寝ています。
ティラノサウルスだって他の動物と一緒で、いつも暴れている訳ではありません。
お腹が空かないよう、無駄に動かず静かにしているでしょう。
なので3人は近くで見たり、触ってみることが出来ました。
でも、ティラノサウルスもお腹が空いている時や、子どもが狙われている時には襲ってきます。
むくりと頭をもたげるティラノサウルスたち。
3人は大丈夫でしょうか・・・。
『としょかんのきょうりゅう』の素敵なところ
- とてもリアルで迫力満点の恐竜たち
- 現代の動物との対比やつながりが面白い
- 物語と図鑑の程よいバランス
この絵本のなにより素敵なところは、恐竜たちの躍動感あふれる生き生きとした絵だと思います。
本当にそこで生きているかのような恐竜たちの絵を見るだけで心躍ります。
特にティラノサウルスが起き上がったところなど迫力満点で、その唸り声まで聞こえてきそうなほど。
肌の質感や、毛並みまで細かく描き込まれています。
また、生態系の近い現代の動物が一緒に描かれ、その類似点や、大きさの対比などがわかりやすくされているのも面白いところです。
古代から現代への進化の軌跡を感覚的に感じることが出来るのです。
名前の表示が現代の動物は黒、古代の生物は赤で色分けされているのもわかりやすくて素敵な配慮だと思います。
子どもたちも、
「パラサウロロフスって大きいんだね」
「キリンさんより大きいよ!」
「確かにカメさんみたい」
など、比べながら恐竜を見ている子がたくさんいました。
そんな風に図鑑の要素が強い絵本なのですが、そこに3人の兄弟が登場し物語になっていることで、見るための敷居をとても低くしてくれているのも魅力的なところです。
3人と一緒にこの大きな絵本を発見することで、自然に図鑑の世界へと誘われていきます。
さらに3人を通して、図鑑の中を冒険し、恐竜たちに触ることも出来てしまうのです。
こんなに魅力的なことはありません。
そして極めつけは、物語だからこその起伏があること。
ティラノサウルスが起き上がって目が合った時にはハラハラドキドキです。
でも、図鑑としての情報や恐竜の生態などはしっかりたっぷり入っている。
このバランスが本当に読みやすく、面白いのです。
恐竜のことを楽しく、詳しく、近くで知ることが出来る。
物語と図鑑が絶妙なバランスで融合した科学絵本です。
コメント