作:大野隆介 出版:ロクリン社
普段は目にすることのない妖怪たち。
夜の雪山にはそんな妖怪たちが当たり前のように暮らしています。
コロポックルに誘われて、一緒に夜の雪山を歩いてみませんか。
あらすじ
誰も知らない雪の降る山奥で遭難していた男のもとに雪女がやってきました。
そして冷たい息を吐き、男を凍らせてしまいました。
一方、ハナコという女の子が布団で寝ていると、枕元に小さな男が立っていました。
その男は「いっしょに来てください」といってきます。
一緒に行くことにしたハナコと小さな男が道を歩いていると、かまいたちが現れます。
なんとかやり過ごし歩いていくと、また別の妖怪が。
進んでいく中色々な妖怪とすれ違っていきました。
さらに行くと、そこには腹をすかせた見越し入道が。
息をひそめていましたが、匂いで見つかってしまいました。
摘まみ上げられ今にも食べられそうなハナコ。
果たして、無事に家に帰ることは出来るのでしょうか。
小さな男はなぜ雪山へハナコを連れてきたのでしょうか。
『雪ふる夜の奇妙な話』の素敵なところ
- デフォルメされていないリアルで怖い絵
- ページの色々なところに隠れている妖怪たち
- その話の展開はズルい
少しもデフォルメされていない人物や妖怪たち。
だからこそリアルで不気味な夜の山。
一歩一歩歩いていくたびに、次はなにが出てくるのかとドキドキします。
そして、不気味な妖怪の姿を見て、不気味な怖さを感じることでしょう。
でも、そんな妖怪たちには怖いだけでなく、惹きつけられてしまう魅力もあります。
ページの中に新しい妖怪を見つけると「あ、あそこにもいるよ!」とうれしそうな声。
そんな楽しみを見越してか、最後のページに出演した妖怪のプロフィールが載っています。
ですが、写真も無ければどのページにいるかというヒントもありません。
文章を読んで特徴を元にこれかなと探すのです。
だからこそ、議論が盛り上がります。
「これかな?」「いや、ここが違うよ」などなど、話し合いながら探します。
しかし、この絵本の一番の特徴はその展開にあります。
おそらく誰も予測できないでしょう。
怪談だと思っていたらコメディだったのですから。
この展開は面白いというよりズルいです。
ぜひ、長い前振りからの渾身のオチを見てみて欲しいところです。
『雪ふる夜の奇妙な話』のおすすめの読み方
- 思い切り怖い雰囲気で読んで、オチへの前振りを全力でしましょう
- ページはゆっくり見せていく
- 余韻を持たせて終わる
この絵本の何より大事な部分は怪談話の雰囲気から、最後の場面で一転して笑いへと繋がる秀逸な流れです。
見越し入道に食べられそうになるまでは、暗く怖い雰囲気で静かに読んでいきましょう。
そこからオチまでは間や沈黙を駆使して、オチへ繋げていきましょう。
「どうなるんだろう・・・」から「・・・え?」そして笑いに繋がっていくと思います。
全体を通して、ページはゆっくりと見せ妖怪の姿や、隠れている妖怪を探す時間を取っていくといいでしょう。
また、小さな男や雪女に凍らされた男の正体などは言葉では明かされません。
でも、こっそりヒントがあったり、話の流れで予測できます。
明言はされていないので、語りすぎず余韻を残すくらいがちょうどよいのではないかと思います。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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