作:有栖川有栖 絵:市川友章 編:東雅夫 出版:岩崎書店
偶然乗り合わせた電車の中がおばけだらけだったら・・・。
「おろしてください」と思うでしょう。
でも、簡単に降ろしてくれるのでしょうか。
そんな電車に乗ってしまった男の子のお話です。
あらすじ
裏山を探検していて道に迷って男の子。
小さな駅を見つけ、ちょうど来た電車に乗ることが出来ました。
普通に見えた電車でしたが、トンネルを抜けると乗客がおばけに変わっていた。
息をひそめていると車掌さんが現れた。
人間だとわかると車掌さんは反対側のホームの列車を指差し言った。
「乗り換えなさい。おうちに帰る最後のチャンスだ」と。
男の子は慌てて言われた通り乗り換えた。
しかし、そこにもたくさんのおばけが。
男の子は騙されてしまったのでしょうか。
果たして家に帰ることは出来るのでしょうか。
『おろしてください』の素敵なところ
- ひたすらに不気味な絵
- 救いのないストーリー
- 余白のある怖さ
絵のタッチもそうですが、おばけたちの造形がただ怖いのではなく、気持ち悪く不気味です。
本能的に仲良くできないと思わせてくれます。
タコの顔をしたおばけは、口に魚をくわえさせていて、その魚が死んだ目をしていたり
車掌さんが仮面を外すと、口から触手が出ていたり。
そして、救いのないただ怖いストーリーが、その絵と相まって怖さを増幅させます。
「よかったね」とならない終わりに、読み終わった後はしーんとなります。
また、男の子がどうなったのかが語られないことや、おばけたちの秘密によって、想像する余白があるのも怖い所。
自分の身の周りにもおばけが潜んでいるかもしれないと思わせてくれます。
純粋な怖さをぜひ味わってください。
『おろしてください』のおすすめの読み方
- 導入は希望をもって
- トンネルを抜けたら不気味に
- 電車を乗り換えたら希望をもって
迷っている時に見つけた駅と電車。
町に戻れると希望をみつけ、ほっとした様子で読んでいきます。
しかし、トンネルを抜けると乗客の様子がおかしくなっています。
そこからは声のトーンを落とし、不気味な様子で。
車掌さんに見つかるのが一番のドキドキポイントです。
間や声色で怖がらせていきましょう。
でも、帰り道を教えてくれ徐々に明るい気持ちになっていきます。
ほっとしていく様子を明るく読んでいき、「よかったね」という雰囲気を作りましょう。
そして、駅に着いた後の最後のオチのページ。
一気に声のトーンを落とし、絶望を与えましょう。
怖がらせるのが楽しくてしょうがないこのお話。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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