作:まるやまあやこ 出版:福音館書店
いつもは一人でいけるトイレ。
でも、夜になると話は変わってきます。
しんとした家の中、暗い廊下・・・。
いつもと違う雰囲気の中、勇気を出してトイレに挑戦するお話です。
あらすじ
真夜中。
ひろこはトイレに行きたくなって目を覚ましました。
しかし、お母さんは赤ちゃんのオムツを変えていて手が離せません。
ひろこは少し考えて、一人でトイレに行ってみることにしました。
ぬいぐるみのみいこを連れて、一人でトイレに向かいます。
薄暗くてしんとした廊下に、ひろこの足が止まります。
するとみいこがひろこの腕から降り、尻尾を握ってついてくるよう言いました。
途中、ドアの模様が顔のように見えたりもしましたが、みいこのおかげでトイレまで来ることが出来ました。
トイレに着くと、なにやら中から音がします。
なんと、トイレの中にヤギがいて、トイレットペーパーを食べていたのです。
ヤギはひと鳴きすると、廊下の暗闇に消えていきました。
ひろこはなんとか用を足すことが出来ました。
しかし、トイレットペーパーがないことに気付きます。
ヤギが食べてしまったからです。
新しい紙は高い棚の上。
背伸びしても届きません。
すると「私が取ってあげる」と声がしました。
その声はウサギでした。
ウサギは高くジャンプすると、紙を取ってくれたのでした。
ひろこがトイレから出ようとするとまた声が。
その声は「ちょっとちょっと忘れているよ」と言ってきます。
一体誰の声でしょう?
ひろこの忘れているものとは一体?
『まよなかのトイレ』の素敵なところ
- 夜のトイレあるあると不安な気持ちが詰まっている
- 楽しいエピソードでトイレに行ってみようという勇気をくれる
- よく見るとトイレの中にいる動物たち
この絵本にはいつもと違う夜のトイレにつきもののあるあるや、その時の心情が見事なまでに描かれています。
しんと静まり返った薄暗い廊下、顔のように見えるドアの模様、ヒンヤリした床など。
いつもなら短い廊下も、なんだか物凄く長く感じたり、なにかがいる気がしてしまう心情を細かく描きだしているのです。
だからこそ「あー、あるある」「昼間は怖くないのにねー・・・」と共感を得られているのだと思います。
でも、不安な気持ちを描き出すだけでなく、トイレでの不思議で楽しいエピソードがたくさんあるのもこの絵本の魅力です。
ぬいぐるみのみいこが先導してくれたり、ヤギがいたり、ウサギが助けてくれたりと、ファンタジーで楽しいエピソードが盛り沢山。
なんだか、トイレに行ってみたくなるような、ワクワクするものばかりです。
これらはきっと「一人で行ってみようかな?」という勇気を後押ししてくれるに違いありません。
さて、そんな楽しいエピソードに出てくる動物たち。
最初は「なんでウサギがいるの!?」といったように、突拍子もないように思えます。
ですが、トイレの中をよく見ると、実はウサギや他の動物も隠れているのです。
それを見つけると「あ、この子が出てきて助けてくれたんじゃない?」と物語への納得感が一気に増します。
そんな仕掛けもこの絵本の素敵なところ。
自分の家のトイレにいる動物たちも「出て来てくれるかな」と、なんだか愛着が湧いてくるかもしれません。
昼間とは全然違う真夜中のトイレ。
不安でいっぱいの真夜中のトイレを楽しいエピソードで描き出す。
なんだか勇気の出てくる絵本です。
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