作:佐藤オオキ 出版:ダイヤモンド社
飲み物を飲むためのコップ。
そこに色々な機能をつけてみる。
どんどん変化させていった結果・・・。
コップってなんだっけ?
あらすじ
白いマグカップにコーヒーと牛乳を入れて一休み・・・。
と思っていたら、混ぜるためのスプーンがない。
そこで、コップは閃いた。
底を尖らせて、コマのようにして回したら混ぜられるかもしれない。
それとも、コップをU字型に伸ばして、それぞれの端からコーヒーとミルクを入れたら中で混ざるかも。
コップの真ん中に仕切りをつけ、それぞれにコーヒーとミルクを入れ、そのまま飲んだらお腹の中で混ざるかも。
さらに仕切りを縦から横にして、底に空間を作る・・・。
それを引っ張り出せるようにしたら引き出し!
中にはクッキーを入れておこう。
と思っていたら、「あっ!」
段差につまずいてこぼしてしまった。
今度は段差に強くなる方法を考えよう。
こうして、コップの形はどんどん変わっていく・・・。
最終的にはどんな形になるのだろうか。
『コップってなんだっけ?』の素敵なところ
- どんどん広がるコップの可能性
- 常識にとらわれない発想力と加工の仕方
- ふと、最初の目的に気付く
いろんな形のコップはありますが、その用途は「物を飲むこと」。
そのための機能をたくさんつけてみると、いつしかコップという枠を跳びこえていました。
コップを使って、その枠組みを突破していく想像力。
それによって、既成概念にとらわれない楽しさ。
それがこの絵本の一番の魅力だと思います。
その発想力は予想外のものばかり。
仕切りを作り始めたあたりから「ん?」と子どもたちにも疑問が広がり始めます。
そして、まさかの口を閉じるという荒業に出るではありませんか。
しかし、ここではまだ、閉じたふたにに穴を開け飲み口を作っていくのでコップとしての働きは失っていません。
ここからです。
鳥の巣になったり、じょうろになったりと、コップとしての生き方は脱ぎ捨てていきます。
もうこうなったらなんでもありの発想力勝負。
子どもたちもコップであることはほぼ忘れて盛り上がります。
この類をみないレベルの発想力と加工力が、この絵本のおもしろさを支えているのでしょう。
子どもたちの発想力も一段階突破してくれます。
ですが、物語終盤。
ふと、思い出すのです。
「そういえば、カフェオレを作っているんだった・・・」と。
こうして、コップの「物を飲む」という本質を見つめ直し、哲学の片りんに触れるのです。
でも、最後の最後に新たな問いが立てられて終わるあたりに、作者のいたずら心を感じます。
コップという身近なものを通して、その使い方の無限の可能性に思いを馳せる。
と、同時にそのものの本質も考えさせられる。
そんな哲学に少し触れてみることが出来る絵本です。
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