作:内田麟太郎 絵:降矢なな 出版:偕成社
寂しい時に1時間100円で買える「ともだちや」。
でも、それは本当に友だちと言えるのでしょうか?
「本当の友だちってなんだろう?」と考えさせられるお話です。
あらすじ
ある森にともだちやをしているキツネがいました。
1時間100円で友だちになってくれるお店です。
ともだちやが歩いていくと声をかけられました。
声をかけてきたのはクマでした。
クマはともだちやを買い、一緒に食事をすることになりました。
イチゴを勧められましたが、キツネはイチゴなんて食べません。
ともだちやは美味しそうな顔をしながら、無理やりイチゴを飲み込みます。
はちみつも一緒に食べ、しくしくするお腹を押さえながら、200円をいただきました。
ともだちやがとぼとぼと歩いていくと、「おい、キツネ」とまた声をかけられました。
声をかけてきたのはオオカミでした。
オオカミはキツネにトランプの相手をしろといいます。
二人はトランプを楽しみました。
トランプが終わった後、キツネはオオカミにお代の話を切り出しました。
すると、急にオオカミが目を尖らせて怒り始めたのです。
オオカミはなぜ怒り始めたのでしょうか?
キツネは一体どうなってしまうのでしょう。
『ともだちや』の素敵なところ
- 「本当の友だちってなんだろう?」と考えさせられる
- キツネの表情の移り変わり
- こっそり張られたさり気ない伏線
この絵本では普段当たり前のように使っている、「友だち」という概念について考えさせられます。
絵本の中では「ともだちや」という極端でわかりやすいモデルで描かれますが、現実の世界にもこれに似た関係の友だちって結構いるもの。
「なにかをくれる」「一緒にいると得」などなど。
そんな利害のために少し無理して関わっている「友だち」は「ともだちや」と変わらないかもしれません。
この絵本を読むと、大人も子どもも「自分の本当の友だちって誰だろう?」。
そんな考えが浮かんできます。
そして、本当の友だちと遊んでいる時の楽しい気持ちは表情に現れてきます。
この絵本ではキツネの表情に。
ともだちやとして無理やり笑っている笑いと、オオカミとトランプをやっている時の笑い。
本当の友だちを見つけた後の晴れ晴れとした表情。
それらが見違えるように違うのです。
キツネの嬉しそうなキラキラした笑顔を見ていると、こちらまで嬉しい気持ちになってくるほど。
さて、そんな本当の友だちを見つける流れには、こっそりひっそりと伏線が張られていました。
それはたった一言のセリフ。
でも、その威力は物凄く大きく、それによって物語の整合性が取られ、理不尽さを感じない、大人が読んでも物凄く納得感のあるものになっているところが本当にすごいのです。
「ともだちや」と「本当の友だち」という比較を通して、「友だちってなんだろ?」と考えさせてくれる。
子どもも大人も楽しめる、じんわりと心に染みわたるような絵本です。
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