作:内田麟太郎 絵:山本孝 出版:岩崎書店
桜が咲くと自然と花見が始まります。
ごちそうにお酒、そして歌。
これはオバケの世界でも同じみたい。
でも、オバケの花見はスケールが少し大きいかも・・・。
あらすじ
オバケたちの暮らしているオバケ長屋。
今日はそんなオバケ長屋の花見です。
みんなで山へ登り、桜の木の下で宴会が始まります。
ろくろ首のあねさんがつま弾く三味線に合わせ、河童が歌い始めます。
うまいお酒に、うまい肴。
みんな浮かれて踊り出しました。
しかし、その時大きな黒雲が現れて、空は大荒れ。
雲の中では、花見に呼ばれなかったかみなりが、すねて暴れていたのです。
そこでろくろ首のあねさんが、首をするする伸ばしてかみなりの所まで行きました。
かわいくウィンクをして、かみなりを花見に誘います。
かみなりを首に掴まらせると、首を縮めてみんなのところへ。
改めて、かみなりを仲間に入れて花見が始まりました。
でも、みんなで盛り上がり過ぎて・・・。
『おばけの花見』の素敵なところ
- 怖さ0の可愛く明るいオバケたち
- 臨場感あるあねさんの首伸ばし
- 所々で出てくる古典的な言い回し
この絵本はオバケの本。
ですが、怖い要素はなんと0です。
表紙からもわかるように、まず絵がとってもかわいいオバケたち。
そんなオバケたちは、お花見でも頬を赤らめながら、歌えや踊れで明るい姿を見せてくれます。
子どもたちも仲良くご飯を食べたりと、楽しさしかありません。
それでいて、どこか上品なのも素敵なところ。
オバケたちの酔い方、騒ぎ方は見ていてこちらまで楽しくなります。
それを邪魔するかみなりも、花見に誘われれば照れつつもにっこり。
確執もなく、みんなで花見を楽しみ、盛り上がるのです。
さて、暴れるかみなりを説得して、花見に誘った立役者ろくろ首のあねさん。
その雲まで伸ばす首伸ばしは圧巻の見応えです。
絵本を縦にして、遠近法で遥か雲の上まで伸びていく臨場感を味わえます。
子どもたちも「ろくろ首ってこんなに伸びるんだね!?」「長すぎる~!」と、これまで見たろくろ首史上最長を記録していた様子。
もちろん戻る時も、ものすごい高さからも戻ってくるのを感じられます。
また、素敵なオバケたちの絵だけでなく、文章も魅力的なのがこの絵本。
所々で出てくる古典的な言い回しが、このオバケの古風な世界観をより味わい深いものにしてくれているのです。
例えば、
「一転、にわかにかきくもり」雨が降ってくる。
「はるの~やまに~ふたりきて~」という河童の歌。
などや、
「無理はございません」
「歌なども出てまいります」
のような語尾など、落語を聞いているような気分になるのです。
可愛く明るいオバケたちによる、楽しくウキウキの花見。
見ているこちらまで楽しく、花を見に出かけたくなる絵本です。
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