作:長新太 出版:文研出版
何かに夢中になっていると周りが見えなくなることがあると思います。
そんな時、実は後ろで大変なことが起こっているかもしれません。
ほら、このブタヤマさんのように・・・。
あらすじ
ブタのブタヤマさんはチョウをとるのに夢中で、後ろから何が来てもわかりません。
屋敷から大きなオバケが出てきて、ブタヤマさんを見ています。
「ブタヤマさんたらブタヤマさん。後ろを見てよ。ブタヤマさん。」
呼びかけても全然気づいていない様子。
巨大な鳥がいても、巨大なセミにおしっこをかけられそうになっても、ネズミに臭いを嗅がれても、巨大バッタがいても・・・。
ブタヤマさんは気付きません。
あ、やっとブタヤマさんが呼びかけに気付いて「なあに?」と聞いてきました。
でも、ちょうど後ろにはなにもいません。
ブタヤマさんはまたチョウをとりに戻ります。
すると、後ろから・・・。
『ブタヤマさんたらブタヤマさん』の素敵なところ
- スケールの大きすぎる危機
- 子どもを巻き込むライブ感
- 間の悪すぎるブタヤマさん
ブタヤマさんは気付いていないけれど、その後ろでは大変なことが起こっています。
でも、その大変なことのスケールがとても大きいのです。
とにかく体の大きさがでかい!
セミやネズミ、バッタなど、出てくる生き物はよく見るものですが、大きさはブタヤマさんの10倍以上ありそうなものばかり。
そのスケール感だけで子どものテンションは上がります。
「でけー!」と大喜びなのです。
さらにこの生き物たちがやたらとリアル。
ブタヤマさんのコミカルな感じとのギャップがあり過ぎて、「絵が上手だね~」と子どもが感想を言ってしまうほど。
大きさと絵のタッチのギャップが、ページをめくるたび子どものテンションを上げていくのです。
また、「ブタヤマさんたらブタヤマさん」とページ内のブタヤマさんに呼びかける参加型の構図も盛り上がるポイントです。
これには子どもたちも必死に呼びかけます。
「後ろ向いて!」「舐められてるよ!」「食べられちゃう!」
と必死です。
でも、気付きません。
どんどん色々な生き物が出てきます。
そのたび呼びかけますが気付きません。
このやきもき感と、ライブ感がたまらなく面白いのです。
必死な読者とのんきなブタヤマさん。
このギャップはこの絵本ならではだと思います。
しかし、たまにブタヤマさんに声が届きます。
ただ、間が悪いことに、その時はちょうど後ろに何もいません。
これが本当にいいアクセントになり、間延びを防いでくれるのです。
やっと気づいたブタヤマさんに、「今じゃないよ!」「もうちょっと早く気付いてよ」と落胆の声。
この溜めにより、次のページで「今!今!」と、後半戦も盛り上がるのです。
スケールが大きすぎる危機の数々に盛り上がる。
必死な読者とのんきなブタヤマさんのギャップがくせになるナンセンス絵本です。
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