作:田島征三 出版:フレーベル館
強い風が吹いてる日。
手を広げれば空だって飛べてしまいます。
でも、気持ちいいけど、危険だってたくさんある空。
今、風とともに冒険が始まります。
あらすじ
日曜日の朝早く。
お兄ちゃんのネノくんと、妹のキフちゃんは誰かの声に目を覚ましました。
その声は「ハタケニオイデ」と言っています。
二人は父さんの畑を手伝うため家を出ました。
風が二人の背中を押してくれています。
畑では父さんが野菜の苗を植えていました。
ネノくんとキフちゃんは芋掘りをします。
すると、風に乗った落ち葉が二人の顔にくっつきました。
そして、気付くと落ち葉が大きくなって、二人ともその上に乗って空を飛んでいたのです。
飛んでいるうち、野菜や虫、動物など、他の生き物も落ち葉に乗って飛んできました。
そこにトンボが飛んできて、みんなを追い越していきます。
トンボは羽を広げて上手に風に乗っているのです。
ネノくんとキフちゃんは、トンボの真似をして手を広げて風に乗ってみます。
すると、上手に風に乗れたではありませんか。
風に乗り、飛んでいると、目の前にクモの巣が。
飛んでいたみんなクモに捕まり、キフちゃんが食べられそうになっています。
すかさず、ネノくんが飛び出すと、クモの巣はバラバラに。
キフちゃんやみんなはまた飛び出すことが出来ました。
さらに飛んでいくと、急に大きな風が吹いてきました。
そこに現れたのは風の女神。
どうやら、みんなが自分の風で遊んでいることに怒っているみたいです。
一体どうなってしまうのでしょう。
『かぜがふくふく』の素敵なところ
- 本当に風が吹いているような絵の勢い
- 色々な方法で表現される風
- ハラハラドキドキが終わらない夢のようなひと時
この絵本のすごいところは、本の中で本当に風が吹いているのを感じられるところです。
細かな風の流れ、飛んでいく勢い、その気持ちよさそうな姿など、いたるところで大小様々な風の流れを感じられるのです。
ページをめくるたび、風が吹く音や、風切り音が聞こえてくるよう。
こんなに生き生きと風を感じられる本はなかなかないと思います。
また、風の表現法が多様なのも面白いところです。
「ふくふくふくふく」と大量の「ふく」という字で風が吹いてくる。
「ぴゅーん!ぴゅーん!びゅーん!」と擬音で表現する。
女神が出てくる時に「ドンドコドン ドンドラドン」と登場曲のような風の音。
など、様々な風が吹いてくるのです。
これには子どもたちも面白がって、
大量の「ふく」の字に「本当にふくって書いてある!」
女神の風の音に「また、女神来ちゃったよ!」と音を聞いただけで想像する。
など、思い切り楽しんでいました。
さて、この風を感じることも大きすぎる魅力ですが、それと同じくらい魅力的なのが物語です。
顔に落ち葉が張り付いたところから物語は始まり、気付けば空の上へ。
飛ばされるだけではなく、自分で風に乗れるようになっていきます。
しかし、クモや風の女神など、ピンチもたくさん出てきます。
それを一つ一つ乗り越えていく。
そんな、ハラハラドキドキの展開が、風が吹くように息をつかせず飛び出してくるのです。
もう、目を話している暇などありません。
一瞬にして引き込まれ、「本当に空を飛んでる!」「鳥みたい!」「あぶな~い!」と、みんなすっかり物語の中で風に吹かれているのです。
それはまさに夢のような楽しいひと時でした。
勢いのある絵と物語があっという間に見ている人を魅了する。
本当に風が吹いていることを感じられる絵本です。
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