作:小野不由美 絵:nakaban 編:東雅夫 出版:岩崎書店
語りすぎないので、わからない子もいるでしょう。
でも、わかってしまうと背筋がぞくっとするお話です。
ジャパニーズホラー特有の怖さを絵本で味わってみてください。
あらすじ
女の子が小さな開かない箱を見つけた。
振るとカサコソ音がする。
雨の降る日、その箱が開いていた。
中には何も入っていない。
今度はメダカのエサを入れていた箱が開かなくなった。
メダカがいなくなっていた。
振るとカサカサ音がする。
風に吹く日、箱が開いていた。
中には埃しか入っていない。
ハムスターが逃げ出した。
引き出しが開かなくなった。
ノックするとカサコソ音がする。
曇りの日、引き出しが開いていた。
中には小さな骨の欠片。
「おかあさん、これ」というと、
「それより、犬を探してきてちょうだい」と言われた。
犬も消えてしまったのでしょうか。
今度はどこが開かなくなってしまったのでしょう・・・。
『はこ』の素敵なところ
- 語り過ぎない怖さ
- 黒を基調とした、美しくも不安にさせる絵
この絵本はすべて女の子の視点で描かれます。
そのため、箱の正体も、細かな説明もありません。
骨の欠片は一体何の骨か、いなくなった犬はどうなったのか。
どれも語られないまま進んでいきます。
「次はなにが消えてしまうんだろう」という女の子の不安とともに。
それ故に、わからない子には怖さがまったくわからないけれど、
共感してしまったり、想像してしまうとお話の展開や結末に言葉では表現できない怖さや不気味さを感じ、背筋が凍るでしょう。
絵本でこの感覚を味わえるのは貴重だと思います。
その物語の不安感や不気味さを引き立てているのが美しくも暗く沈んだ絵です。
細い線と、深い黒がしっかりと心に不安感を沁み込ませていきます。
ぜひジャパニーズホラーを絵本で体験してみてください。
下手な映像よりも怖いと思います。
『はこ』のおすすめの読み方
- 女の子の目線で徐々に不安になっていく様子を表現していく
最初は箱といなくなることの関連性を感じていないため、不思議なことが起こって疑問を感じている様子で読んでいきます。
しかし、ハムスターが消えた場面から関連性がわかってきて、次に何が消えるのか不安が大きくなってきます。
このあたりから、心配そうな様子を織り交ぜていきましょう。
語りすぎると、せっかくの怖さが薄れてしまいます。
みんなにこの怖さが伝わらなくてもいいという気持ちで読むのがおすすめです。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
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