文・絵:いわむらかずお 出版:復刊ドットコム
ネコが店主の不思議なメガネ屋さん。
そこには形だけでなく、見え方まで様々なメガネが売っていました。
そして、ある二つのメガネを組み合わせると、さらに不思議な出来事が・・・。
あらすじ
男の子のさとちゃんは、自分で工作し青いレンズのメガネを作りました。
かけると世界が青く見えるメガネです。
早速、友だちに見せるために、みんなが集まる空地へと行きました。
しかし、いつも賑やかな空き地は静まり返っていました。
そして、土管に一匹のネコが座って、さとちゃんのことを見てるのでした。
そのネコは「いいメガネをかけているね」と話しかけてきました。
さとちゃんがメガネをネコに見せると、メガネのことを褒めてくれました。
ネコの名前はごーぐると言い、世界中の珍しいメガネを集めているのだそうです。
ごーぐるはさとちゃんについてくるよう言い、土管の中に飛び込みました。
さとちゃんも土管の中に入ると、そこには穴が掘ってあり、道が続いています。
行きついたのは動物たちの町でした。
お店もたくさんあり、賑やかな声が聞こえてきます。
ごーぐるのお店もありました。
ごーぐるはメガネ屋さんだったのです。
お店には様々なメガネがあり、かけるとなんでも大きく見えるメガネや、四角く見えるメガネ、分身して見えるメガネなど、どれも不思議なものばかりでした。
その中に、さとちゃんのメガネとそっくりなメガネがありました。
そのメガネはレンズが真っ赤な夕焼けメガネでした。
かけるとなんでも夕焼け色に見えます。
さとちゃんは青色の自分のメガネと、真っ赤な夕焼けメガネを重ねると何色に見えるのか気になりました。
重ねてかけてみると、世界が紫色に見えます。
でも、それだけではありませんでした。
ゴーグルが「赤と青を合わせると緑色になる」とおかしなことを言ったとたん、ごーぐるの周りだけ赤色になったのです。
そして、ごーぐるが間違いに気づいて、「紫色だった」と訂正すると、ごーぐるの周りが青色に変わったではありませんか。
さとちゃんはこのメガネのことが少しわかってきました。
そこで、町に出てもう少し調べてみることに。
まずはウサギの果物屋です。
ウサギが「今日のブドウは美味しいですよ」と呼び込みをしています。
ウサギの周りは青色。
一粒貰って食べてみると、本当に甘くて美味しいブドウでした。
次にやってきたのは、キツネのジュース屋さん。
キツネは「とれたてオレンジジュース」と宣伝しています。
しかし、キツネの周りは赤。
と、言うことは・・・。
『うそみーるめがね』の素敵なところ
- いつの間にか迷い込んでしまう不思議な世界観
- お気に入りのメガネを探したくなる多種多様なメガネたち
- 自分でも作りたくなるうそみーるめがね
この絵本の大きな魅力は、その不思議な世界観にあります。
最初は友だちに、作ったメガネを見せたかっただけなのに、いつもと空き地の様子が違うことから始まります。
もうこの段階で、子どもたちは非日常感を感じて静かになります。
そこから、不思議なネコのごーぐると出会い、土管の中の世界へと足を踏み入れ、動物たちの世界へと誘われていくのです。
そこではごーぐるとの楽しいひと時が待っていますが、それだけではありません。
非日常世界ならではの、怖い体験も待っています。
そして、元の世界に帰ってきた時、現実だったのか夢だったのか、曖昧に終わるのです。
この「なんだか不思議だったな~」という世界観がなんとも言えず、楽しいものになっているのです。
そんな不思議な世界にあるごーぐるのメガネ屋さんには、本当に色々なメガネが置いてあります。
形も効果も様々で、かけた時に見える様子も描かれていて、不思議さが倍増です。
その見え方と、形を見比べて、「これがでかでかメガネかな?」「これはどんな風に見えるんだろう?」「絶対光るよ!」など、メガネ談議がつきません。
定番の「どのメガネが一番欲しい!?」も当然出てきます。
さて、そんな中でタイトルにもなっているうそみーるめがねは、売り物ではありませんでした。
さとちゃんの作ったメガネと、売られている夕焼けメガネを組み合わせて偶然できたのです。
そして、これは作れることに気が付きます。
物語の始めにさとちゃんが、紙とカラーフィルムでメガネを作っているのを見ているからです。
さらに紫のうそみーるめがねだけではなく、自分で好きな色や形にカスタマイズも出来てしまいます。
そんな風に、物語を楽しみ、メガネを見るだけでなく、自分で作ったメガネで物語が続いていくのもこの絵本の大きな魅力なのだと思います。
不思議な世界と、不思議なメガネ。
さらに工作を通して、それが現実の世界に出てきてしまう。
不思議不思議な絵本です。
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