ゆきむすめ(4歳~)

絵本

原作:ロシアの民話 再話:内田莉莎子 画:佐藤忠良 出版:福音館書店

雪で作られた女の子ゆきむすめ。

暑さや太陽の光が苦手です。

でも、ある日、人間の友だちと遊びに行くことになってしまいました・・・。

あらすじ

あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。

二人には子どもがいませんでした。

ある冬のこと。

おじいさんとおばあさんは雪で女の子を作りました。

とてもかわいい女の子です。

名前はゆきむすめ。

すると、突然ゆきむすめはにっこり笑い手を挙げたではありませんか。

さらに歩き出し、おじいさんとおばあさんの小屋の方へ向かいます。

おじいさんとおばあさんは、驚くやら喜ぶやら。

ゆきむすめを追っていきました。

ゆきむすめはみるみるうちに大きくなり、賢く、美しくなっていきました。

おじいさんとおばあさんは、ゆきむすめをとてもかわいがりました。

冬が過ぎ、春になりました。

外では雪が溶け始めています。

子どもたちは外を駆け回りますが、ゆきむすめは家の中に閉じこもって、遊びに行こうとはしません。

おばあさんが心配して声を掛けますが、ゆきむすめは首を振るばかり。

だけれど、雲って寒くなる時だけ、ゆきむすめは嬉しそうなのでした。

やがて、夏になりました。

ゆきむすめのもとへ、おんなのこたちが「森へ遊びに行きましょう」と誘いに来ました。

ゆきむすめは嫌がりましたが、おじいさんやおばあさんに勧められ、仕方なく出かけたのです。

みんなが遊びまわる中、ゆきむすめは木陰に座り、川の水で足を冷やしてお日さまが沈むのを待ちました。

やっと、日が沈みましたが、今度は焚火を飛び越える遊びが始まったのです。

次々と跳び越えていき、ゆきむすめの番になりました。

雪で出来たゆきむすめは一体どうするのでしょう。

『ゆきむすめ』の素敵なところ

  • とてもかわいらしく美しいゆきむすめ
  • 丁寧に遠回しに描かれるゆきむすめの特性
  • 雪のような儚さと物悲しさ

この絵本のゆきむすめは雪で出来たばかりの頃は、とてもかわいらしく。

成長した後は、とても美しく、本物の人間のように描かれます。

「ゆきむすめちゃん、かわいい・・・」と子どもたちも見惚れるほど。

木陰で足を冷やす姿なども絵になります。

そんなゆきむすめは、雪から出来ているので暑さが苦手です。

このゆきむすめの特性を、物語全体を通してゆっくりと描いていきます。

そこでは「暑さが苦手です」といった、直接的ではない遠回しな表現が使われます。

「春の雪解けを迎え、家の中で閉じこもっている」

「曇って寒い日は嬉しそう」

そんな場面を見ていく中で子どもたちは思います。

「きっと雪で出来てるから、暑いと溶けちゃうんだよ」と。

この「きっと・・・」という、言われたのではなく、自分で想像することが、よりゆきむすめに思い入れを抱かせてくれるのです。

そして、それは最後の場面でとても大切な思いなのです。

さて、この物語は悲劇です。

でも、誰も悪者はいません。

それぞれの善意の結果生まれる悲劇。

この絵本ではゆきむすめの視点で見ているので、「ダメだよ!溶けちゃうよ!」と心配になります。

しかし、ゆきむすめを普通の人間だと思っていたら、おじいさんやおばあさん、女の子たちと同じことを言うかもしれません。

「お互いの話をちゃんと聞いていれば・・・」

そんなことも考えさせられてしまいます。

けれども、起こってしまったことは変えられません。

後に残るのは、雪のような儚さと物悲しさだけなのです。

雪から生まれた命をめぐる、美しくも儚い物語。

たまにはこんな純粋な悲劇も読みたくなる物悲しさの残る絵本です。

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