あまがえるのぼうけん(4歳~)

絵本

作:たてのひろし 絵:かわしまはるこ 出版:世界文化社

仲良しな3匹のアマガエル。

いつもの遊び場に飽きた3匹は森へと出かけてみることに。

3匹の冒険が物凄くリアルな絵で描かれていく絵本です。

あらすじ

アマガエルのラッタ、チモ、アルノ―の3匹は、かくれんぼをしていました。

しかし、何か違うことがしたくなり、森の中へ入ってみることに。

次の日、森の前に集まった3匹。

まずは小さな虫をたくさん食べて腹ごしらえです。

それが終わると、いよいよ森の中へ。

森の中には見たことのないものばかり。

ドングリの帽子や葉っぱのマント、トゲトゲの棒などを見つけつつ歩いていくと、虫のたくさんいる木を見つけました。

そこは木から樹液が出ている所で、虫が集まっていたのです。

すると、スズメバチが飛んできたからさあ大変。

虫たちの大げんかが始まりました。

アマガエルたちは急いで逃げ出します。

地面に降りるやいなや、ヤブキリが飛び出して来ました。

3匹を食べようとしているのです。

3匹が葉っぱの陰に隠れると、ヤブキリが消えました。

そっと、覗くと大きなヒキガエルがヤブキリを丸呑みにしていたのです。

アルノ―は助けてくれたのだと思い、お礼を言いに行きました。

しかし、ヒキガエルの舌がアルノ―を捉え、口の中へ吸い込まれてしまいます。

ギリギリのところで、持っていたトゲトゲ棒が、ヒキガエルの口に引っかかり飲み込まれずにすみました。

逃げてきた3匹は、恐ろしくなり、森に来たことを後悔しました。

けんかになって、3匹は泣き出してしまいます。

泣き顔を見られたくなかったアルノ―が、木のてっぺんへ登ると、目の前に見事な夕焼けが広がっていました。

みんなを呼び、その景色を見ると、けんかのことなどすっかり忘れて仲直りです。

お腹が空いた3匹は、夜になると気を取り直して、樹液の出ていた木に戻り、食べられる虫を探してみることにしました。

そこには昼間と違う虫が集まっていて、食べられる虫もたくさんいました。

3匹は夢中で食べていきます。

そこへ突然、ぎらっと光る眼と、鋭い爪が音もなく迫ってきました。

果たして、3匹の運命は・・・。

『あまがえるのぼうけん』の素敵なところ

  • 図鑑のようなリアル過ぎる絵と物語の融合
  • 個性的な3匹のアマガエル
  • 残酷な食物連鎖も真正面から描かれる

この絵本でまず驚かされるのは、その写実的でリアル過ぎる絵です。

図鑑と見間違うほど、自然も生き物も本物そっくりなのです。

さらに躍動感も物凄く、本当にそこに息づいているようなのです。

まるで、3匹と一緒に森の中を歩いているかのような存在感があります。

でも、すごいのはリアルさだけではありません。

この図鑑レベルの絵で、物語が展開されていくのが一番素敵なところだと思います。

写実的な絵で描かれる物語。

そこには妙な実在感が生まれ、普通の物語とはまた違った現実感があるのです。

その中で、3匹の表情はしっかり描かれているのも面白いところ。

動きも顔もリアルなカエルなのに、泣き顔などがしっかり表現されているので、物語としてしっかり感情移入できるのです。

主人公の3匹のアマガエルもそれぞれ個性的。

ここもこの絵本の大きな魅力だと思います。

冒険心の強いアルノ―。

好奇心旺盛なチモ。

臆病なラッタ。

この個性がしっかりと活かされて物語が展開されていきます。

読んでいくと、まだまだ子どもな3匹が力を合わせ冒険する姿に、3匹のことを好きになっているでしょう。

子どもたちも、「俺はアルノ―」「私チモ!」「ぼくはラッタかな~」といったように、自分を重ね合わせる姿も見せていました。

さて、そんな3匹ですがしっかりと虫を食べます。

その描写もしっかりされます。

また、ヤブキリやヒキガエルに食べられそうにもなります。

これも物凄くリアルです。

このように自然を生き抜く過酷さを、しっかりと描いているのも素敵なところです。

この物語では、強大な敵に力を合わせて立ち向かったりはしません。

それは自然界では死を意味するからです。

代わりに、力を合わせて危険を察知して逃げるのです。

これは体の小さな生き物の大きな武器。

まさにアマガエルの特性そのものでもあるのです。

等身大のアマガエルを描くことで、3匹のアマガエルはより魅力的になっているように思います。

3匹のアマガエルのリアル過ぎる冒険を通して、自然の厳しさを感じられる。

だからこそ、本気で3匹を応援したくなるワクワクドキドキの冒険物語です。

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