作:よしながこうたく 出版:PHP研究所
臆病なのにわがままで偉そうな兄ちゃん。
でも、いざという時は頼りになる。
そんな兄ちゃんを持った弟の気持ちが痛いほどよくわかる絵本です。
あらすじ
ぼくの名前はこうた。兄ちゃんの弟だ。
兄ちゃんの名前はたくや。ぼくの兄ちゃんだ。
兄ちゃんはお化け屋敷でぼくの弱虫を治すためだと言って先に逃げていった。
その夜、布団に入ると、天井の模様がおばけに見えると僕を起こした。
ぼくは知っている、兄ちゃんが怖がりだってことを。
ぼくは兄ちゃんが寝るまで電気をつけて見張っていないといけなくなった。
そのせいで毎日寝不足。そんな日が何日も続いた。
ある日、学校が終わって帰ると、兄ちゃんがクレヨンを渡してきて天上の模様をかわいく書き直してくれと言ってきた。
自分でやればいいと言うと、「こうたの方が絵がうまいから描いて欲しい」と言ってくる。
でも、褒められるとついつい描いてしまう。
くそう、兄ちゃんめ。
その夜、ゆっくり眠れると思ったら、また起こされた。
兄ちゃんは絵がうますぎておばけが飛び出して見えると言ってくる。
耐えられなくなって、「おばけさん、こんな兄ちゃんなんか連れて行ってください!」と言ってしまった。
すると、本当のおばけになっておばけの世界へ連れていかれてしまった。
しかし、おばけの世界に着くと兄ちゃんはおばけになるのを楽しみ始めた。
空を飛んだり、目からビームを出したり・・・。
兄ちゃんはさらに暗い方へと行ってしまう。
「兄ちゃん、そっちに行ったらダメだよ!」
兄ちゃんはこのままおばけになってしまうのだろうか。
『ぼくの兄ちゃん』の素敵なところ
- 弟の複雑な感情が表情豊かに描かれている
- コミカルでわかりやすい文章
- コミカルで迫力と躍動感のある絵
偉そうにされて腹を立てたり、理不尽な目に合い「兄ちゃんなんかいらない」と思ったり。
でも、褒められると嬉しいし、なんだかんだ憎めない。
そして、いざという時に頼るのもやっぱり兄ちゃん。
そんな弟ならではのジレンマが表情豊かに描かれています。
読んでいると、兄ちゃんにも弟にも思うところがある絵本だと思います。
その様々な出来事や感情の動きが、子どもにぴったりな感性や、言葉選び、ノリの良さで描かれているから、より心に刺さります。
さらに絵のコミカルさや勢い、迫力と相まって、ハラハラドキドキと笑いが常に渦巻いていて、始まりから終わりまで全く飽きさせないのもすごいところです。
絵の隅々にたくさんの小ネタが仕込まれているので、絵を見て楽しむのもとても楽しい絵本です。
絵が合わさってこそのこの絵本。
ぜひご自分で読んでみてください。
『ぼくの兄ちゃん』のおすすめの読み方
- 弟の目線で一貫して読む
- おばけは最初は明るく、徐々に怖く。
- ツッコミは受け答えしすぎない
この絵本は全編通して、弟の目線で描かれます。
弟の感情をしっかりと表現して読んでいきましょう。
中々言えない悔しさや、褒められるとついやってしまう悔しさ、爆発する怒りなどを感情豊かになりきって読んでいきましょう。
また、おばけは最初楽しさを味合わせるために明るい調子で接してきます。
絵の雰囲気も明るいです。
なので、最初は遊園地のアトラクションでも進めるような雰囲気で読んでいき、暗い方へ案内するあたりから声を低くして誘い込むような雰囲気にしていくと臨場感がより出ます。
あとは、全編通して絵にツッコミどころが満載なので、ページをめくるたび子どもたちがツッコんできます。
それを全部受けていると話が進まないので、この絵本ではある程度流していくのがおすすめです。
ぜひ自分の読み方を編み出してみてください。
コメント