作:みやけゆま 出版:BL出版
チーターを象徴する黒い点の模様。
でも、ある日くしゃみをしたら、点々が飛んでいっちゃった!
飛んでいった点々は・・・。
あらすじ
サバンナに、足の速いチーターが一匹。
自慢は体の点々模様。
いつもより、なんだか寒い日のこと。
冷たい風に体を震わせ、鼻がひくひく・・・。
ハーックション!
大きなくしゃみをしてしまいました。
すると、くしゃみと一緒に体の点々も飛び出していってしまったのです。
飛んでいった点々は、シマウマの体にくっつきました。
点々なんだか縞々なんだかよくわからないテンテンシマウマ。
そんなテンテンシマウマの鼻に、草がすぽっと入ります。
今度はテンテンシマウマが・・・。
ヒヒェーックション!
くしゃみと一緒に、また点々が飛んで行きました。
そして、点々はゾウの体に。
チーターは、ゾウにくしゃみをしてくれるよう頼みました。
くしゃみが出るよう、ゾウの鼻をくすぐると・・・。
パォーックション!
やっと大きなくしゃみが出ました。
でも、点々はシラサギたちへ。
チーターの体に点々が戻る日は来るのでしょうか・・・。
『チーターじまんのてんてんは』の素敵なところ
- 美しいチーターの絶妙な表情と仕草
- くしゃみを使った天丼芸のおもしろさ
- 哀愁が漂い過ぎる最後
この絵本のチーターの立ち姿は物凄く美しい。
しなやかで、力強く、まるでサバンナの王者のような風格を持っています。
思わず子どもたちも「かっこいい・・・」と見惚れるほど。
しかし、このチーターは物凄く色々な顔を見せてくれるのです。
まず、冷たい風が吹いてむずむずする顔。
あの凛々しい顔はどこへやら。
物凄い崩れっぷり。
でも、くしゃみが出る前の表情を見事に表現しています。
もちろん「変な顔してるー!」と言われます。
さらに点々がシマウマにくっついた時には口をあんぐり開けて驚いたり、シラサギが飛び去った後は哀愁を背中で語ります。
でも、本気ダッシュはめちゃくちゃ速くてかっこいい。
本当にたくさんの姿を見せてくれるので、見ているだけで面白く飽きません。
チーターだけでも面白いのですが、この絵本にはお笑いの鉄板が使われています。
それが天丼芸です。
くしゃみをして、点々が飛んでいって、他の動物につく。
その動物もくしゃみをして・・・。
と、同じ展開を重ねる天丼芸。
もう純粋におもしろいのです。
そこに理由はありません。
誰一人、チーターに点々が戻ってくるとも思っていません。
くしゃみが出るたび、他の動物に点々がつくたびに「また~!?」とずっこけるのが楽しいのです。
さて、そんな天丼芸の終わりには、困った状況が待っていました。
こんなことがあろうとは・・・。
チーターは途方にくれます。
子どもたちも唖然。
でも、無情にも投げっぱなしで終わります。
この空気感がシュールでたまらないのです。
「もしかしたら・・・」な救済も用意されてはいますが、きちんとは語られません。
読み手のイメージ次第です。
この最後の場面での、無言のチーターに漂う哀愁が、言いようのないかわいさを醸し出しています。
かっこよくて、かわいくて、物悲しいチーター。
くしゃみを使った天丼芸とそれに対するチーターの反応が面白過ぎる絵本です。
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