作:しらたにゆきこ 出版:アリス館
迷子のモグラが穴を掘って、自分の家を目指します。
掘っているうちトンネルは、ついに地球の裏側まで・・・。
地球規模で巻き起こる、迷子の結末やいかに。
あらすじ
とんがり山のすぐそばに、モグラの一家が暮らす家がありました。
モグラの一家はお父さん、お母さん、おじいちゃん、もぐもぐの4人家族です。
ある日、お父さんが、子どものもぐもぐに言いました。
「お前も大きくなったから、明日からトンネル堀りの練習を始めるぞ」と。
それを聞いて、おじちゃんも自分の技を教えられるのを喜んでいます。
お母さんも、力をつけるため朝ごはんは、もぐもぐの大好物みみずのてんぷらにしてくれると言います。
しかし、晩ご飯が済み、もぐもぐは部屋に戻ると、内緒でトンネル堀りを始めてしまいました。
教えてもらわなくても、上手に掘れるところを見せたかったのです。
調子よく、どんどん掘っていくもぐもぐ。
ところが、池まで掘り進んでしまい、穴の中に勢いよく水が。
慌てて上へと掘り進むと、とんがり山のてっぺんから飛び出し、落ちたところは家の前。
もぐもぐはここからなら、すぐ部屋に戻れると、また穴を掘り始めました。
しかし、いくら下に掘っても、部屋につきません。
どんどんどんどんどんどんどんどん穴を掘っていくと、なんだか寒くなってきました。
着いたところは南極にあるペンギンの国。
急いでもと来た道を戻り、途中を今度は曲がってみます。
すると、今度は暑くなってきました。
着いたところはキリンの国。
もぐもぐはまたまた来た道を戻ります。
さらに掘り進もうとしますが、倒れ込んでしまうもぐもぐ。
たくさん穴を掘り、くたくたでお腹もぺこぺこ。
もう動けません。
もぐもぐはこのまま、家に帰れず、家族にも会えないのでしょうか・・・。
『もぐもぐとんねる』の素敵なところ
- どこに着くのかワクワクドキドキのトンネル掘り
- たまに出てくる俯瞰図で今の状況がわかりやすい
- もぐもぐの後始末をしているみんな
この絵本の一番の醍醐味はもぐもぐのトンネル掘りです。
このトンネル堀りの面白いのが、家には絶対に着かないことがわかっているところでしょう。
普通は「家に着くかと思ったら・・・」というドキドキ感ですが、この絵本は違います。
家を通り過ぎているのがわかっています。
なので「全然違う方に行ってる!どこ行っちゃうの!?」という、ワクワクドキドキが味わえるのです。
しかも、少し先が予想できるのも面白く、掘っている先に池が見えていたり、穴の中の景色が変わっていったりと、結末や到着先を想像する楽しさがあります。
また、そのスケールも大きく、地球規模で穴を掘っていきます。
特に、地球が丸いことを知っている年齢の子などは、「反対側まで来ちゃったよ!?」とそのスケールの大きさを思い切り楽しみ驚いていました。
中にはキリンの国を見て、「ここケニアじゃん!」と具体的に特定してくる子まで。
地理感があると、より楽しめます。
これらが頭の中でイメージしやすいのは、時々出てくる地球の断面の俯瞰図のおかげだと思います。
もぐもぐの家と、今掘っている穴の方向や位置関係、どれくらい離れているかが一目瞭然なのです。
俯瞰図が、新しい穴を掘り始めるたび出てくるので、今どこにもぐもぐがいるのか把握して、物語を読み進められます。
だからこそ、「そっちじゃないのにー!」という、ドキドキ感が生まれるのでしょう。
わかりやすい俯瞰図ですが、実はもう一つ面白いところがあります。
それはもぐもぐのあずかり知らぬところで、みんながもぐもぐの後始末をしている姿が描かれているところです。
池まで掘り抜いたことで、水が入ってきて、もぐもぐの部屋を通り、家が水浸しになっています。
お父さん、お母さん、おじいちゃんは水を吸い出したり、荷物を運んだり大忙し。
トイレからエビが顔をのぞかせたりもしています。
池の方でも、魚が岩をくわえてきて、穴を塞いでいるのです。
さらに、俯瞰図が出てくるたび、周りの時間も進みます。
穴がふさがったことで、水が入ってこなくなり、家でも水の処理が終わりました。
トイレのエビは台所に回収されていたりもします。
というように、それぞれの行動が、お互いに緩く繋がっている様子がさりげなく描かれているのです。
「あ!魚が塞いでくれたから、水がなくなったんだ!」
など、その関連性を発見すると、よりこの絵本が面白くなるのです。
迷子のモグラによる、地球規模の大冒険。
そのスケール感を、もぐもぐの視点と、俯瞰図のコントラストで描いている。
「そっちじゃないよー!」を目いっぱい楽しめる絵本です。
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