文:クォン・ジャギョン 絵:ハワン 訳:いくたみほ 出版:パイインターナショナル
怒ること。
それはとても大切なこと。
でも、怒ることしか知らないと、一体どうなってしまうでしょう。
心のトゲが大きくなって・・・。
あらすじ
体中にトゲを生やした男の子がいた。
男の子の口からは怒りの言葉と一緒に、トゲがビュンビュンと飛ぶ。
毎日、色んなことに怒っていると、トゲもどんどん大きくなった。
誰にでもトゲはあるけど、男の子は誰よりも大きくて鋭いトゲにしようとした。
みんなが怖がって、誰からも手を出されないために。
でも、それだと誰も男の子としゃべろうとしない。
男の子から近づくことも出来ない。
一人ぼっちになってしまう・・・。
『トゲトゲくんはね、』の素敵なところ
- 怒りがトゲを通すことで、物凄くわかりやすく描かれている
- 自分の心のトゲに気付かせてくれる
- 怒り以外の表現の大切さにも気付かせてくれる
普段自然に湧く怒りの感情。
それは無意識に使われることが多いのではないでしょうか?
この絵本では、その怒りをトゲで描き、可視化しています。
だからこそ、物凄くわかりやすく、子どもにもしっかり伝わるのです。
人それぞれの、色々な形のトゲ。
日々怒り続けることで、育っていくトゲ。
普段見ることが出来ない怒りの動きや成長が、トゲを通して一目でわかってしまいます。
トゲが育ちきった未来まで・・・。
でも、この絵本の一番素敵なところは、このトゲを自分事として考えられるところです。
トゲトゲくんの怒りには、どこかしらに自分と重なる部分があります。
友だちに強い言葉を使ったり、力で支配しようとしたり。
そんな姿を見た時に、自分もトゲを伸ばしたり、飛ばしていたことに気付きます。
自分のトゲと怒りの心を直視することになるのです。
では、このトゲをどうしたらいいのか。
絵本の最後にその一つの答えが描かれます。
それは怒り以外の、気持ちの表し方でした。
怒りしか表現の仕方を知らなければ、トゲはどんどん大きくなってしまいます。
しかし、怒り以外にも気持ちは表現できるのです。
そんなことをトゲトゲくんの決断は伝えてくれます。
この絵本を読み終えた時、子どもたちにとても静かな考える時間が生まれました。
「ぼくもトゲを飛ばしてたかも」
「私はこんな時トゲトゲになっちゃう」
そんな風に、ワーワーとした主張ではなく、自分の心を見つめるような静かな感想。
しっかりと、子どもに心のトゲが伝わっていることを感じたのです。
普段当たり前のように出してしまう目に見えない怒り。
その怒りを見えるようにしたことで、自分の心と向き合う機会をくれる絵本です。
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