作:荒井良二 出版:講談社
森の会議では色んな意見が出るたびに、みんなで「そのつもり」になってみます。
想像力を膨らませ、色んなつもりになってみます。
風がソヨソヨ吹いています。
あらすじ
ここは森の中。
森の名前は「そのつ森」。
そのつ森では動物たちの会議がずっと開かれてきました。
森にある空地をどう使おうかという会議です。
動物たちが集まると、フクロウの挨拶で会議が始まります。
まずはサルが出てきて、温泉にしたいと言いました。
みんな「いいねえ、それ」と言って、そのつもりになりました。
次にオコジョが出てきて、山より高いものを作りたいと言いました。
「いいねえ、それ」と言って、みんなでそのつもりになりました。
色々な意見が出る中、リスが出てきて言いました。
「なにもしないでこのままがいい」と。
みんな少し考えましたが、そのつもりになれませんでした。
そのうち、みんな勝手にしゃべり出し、森の会議はもう大変。
会議の行く末はどうなってしまうのでしょう・・・。
『そのつもり』の素敵なところ
- 頭の中でなりきってみる「そのつもり」が楽しい
- 平和でふんわりのんびりした雰囲気と空気感
- 飽きさせない絶妙な緩い起伏
この絵本の醍醐味は「そのつもり」になってみること。
最初から最後まで、空き地は全く変化しないし、どう使うかも決まりません。
色々な「そのつもり」になってみて、一日が過ぎていきます。
でも、「そのつもり」がとっても魅力的なのです。
出てきた動物の言葉に、その光景を想像してみる動物たち。
みんなで温泉に入ったり、山より高い建物から世界を見渡したり。
夢のいっぱいに詰まった光景が広がります。
中には海にしようというものまで。
それも「そのつもり」なら簡単に出来てしまいます。
想像してみると大海原を、みんなでいかだに乗って旅しています。
そんな無限に広げることが出来る「想像力」の面白さに改めて気づかせてくれるのです。
動物たちの考えを聞いているうちに、子どもの想像力も刺激されたのか、
「私はトンネルの家にしたい」
「大きいロボットを作ろう」
と、色々な「そのつもり」が出てきていました。
また、平和でゆったりのんびりとした雰囲気も素敵です。
風がソヨソヨ吹いてきて一日が始まり、風がソヨソヨ吹いて一日が終わります。
動物たちは色んな「つもり」になってみて、特になにも決まらずに一日が終わります。
それがとってもいいのです。
色んな意見が出ますが、みんなまずはそれを受け入れます。
「いいねえ、それ」と言いながら。
言葉も優しく、柔らかく、どこまでもゆったりゆったり進みます。
読んでいると、心がほどけていく感じのするのんびり感が素敵です。
ただ、ひたすら平坦なのかというと、そんなことはありません。
ちょっと怖い「そのつもり」があったり、会議が荒れてきたりと、緩すぎず急過ぎない絶妙な起伏が作られています。
だから、のんびりゆったりは崩さずに、でも最後まで飽きずに見ることが出来るのです。
色んな意見を「いいねえ、それ」と想像してみる。
優しくゆったりとした空気の中で想像力がどんどん広がる絵本です。
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